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退職技術者は即戦力、積極的に採用 勝ち残りに自信みせるアイリスオーヤマ
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アイリスオーヤマの12月期売上高 業績不振から大規模なリストラに踏み切らざるを得なくなった電機大手を飛び出した技術者を積極的に受け入れている企業がある。
生活用品大手のアイリスオーヤマ(仙台市)で、パナソニックやシャープの早期退職者を中心に2013年中に、商品開発のスキルを持つ約30人を即戦力として採用する計画だ。オーヤマが得意とする生活者目線の商品開発との相乗効果を狙い、空気清浄機や掃除機など白物家電の本格展開に弾みをつける。
「もう一度、現場でデザインの仕事をやってみたかった。生活者がひと目でピンと来るようなアイデアを出していきたい」
宮城県角田市にあるオーヤマの商品開発拠点。パナソニックで約35年間、家電製品などのデザインを担当してきた真野一則さん(59)は久しぶりに現場の雰囲気に触れ、声を弾ませる。
ここ数年はマネジメント業務が中心だったが、定年を前に一念発起。昨年12月にパナソニックを退職し、今年2月からオーヤマで働き始めた。今は研修中だが、培ってきたデザインで生活用品の新商品づくりに携わっており、毎週月曜日に開かれる新商品開発会議では役員から意見を求められることもある。
パナソニックで約21年間、半導体事業にかかわっていた松本多津彦さん(51)も同時期にオーヤマに再就職した。加湿器の電子回路の設計を任されている松本さんは「これまでは『部品屋』に徹していた。今後はメーンの電子回路を手がけ、小さい部品で製品のすべてをコントロールする醍醐味(だいごみ)を味わってみたい」と意気込む。
デジタル製品の販売不振や、韓国メーカーなどとの競争激化から、電機大手は軒並み業績が悪化。13年3月期に過去最大の4500億円の連結最終赤字を見込むシャープは希望退職を募集し、昨年12月までに2960人が去っていった。2年連続で7000億円超の最終赤字を見込むパナソニックも希望退職を募っている。
大阪を拠点とする有力企業の相次ぐリストラに機敏に反応したのがオーヤマだった。同社は安定成長が見込める白物家電事業を拡大するため、昨年12月、大阪・梅田に開発拠点を新設し約30人の技術者を中途採用すると発表した。
開発拠点が角田市だけという地理的条件がネックとなり、全国から優秀な技術者を集めるのに苦労してきた。開発拠点を東西2カ所に設けることで、「即戦力となる人材を集めやすくなる」(大山繁生常務)と踏んだ。
大阪で計3回開催した会社説明会には200~300人の技術者が参加。真野さん、松本さんを含めて約20人の採用を決めた。今月中にさらに10人程度を採用する計画だ。
プラスチック製造からスタートしたオーヤマは「生活者の視点」にこだわって生活用品を提供してきた。ただ、04年ごろまでは主要販路となるホームセンターの成長鈍化などもあって売上高は伸び悩んでいた。
新たな収益源として目を付けたのが家電分野だった。05年に発売したペット用の空気清浄機を手始めに、掃除機やサーキュレーターなどと取扱商品を広げていった。
電機大手が志向する機能性ではなく、使い勝手の良さを追求した商品づくりが奏功、生活者に受け入れられた。東日本大震災が発生した11年以降は節電ニーズをうまく取り込み、LED照明や配線工事なしで設置できるIHクッキングヒーターなどの販売が伸び、オーヤマの売り上げを牽引(けんいん)するようになった。
家電部門の売上高は、2012年12月期に165億円に達した。09年12月期の16億円から、わずか3年で約10倍に膨らんだ。13年は300億円まで拡大する見通しだ。
それに伴い、オーヤマの売上高も好調に推移、11年12月期に初めて1000億円を突破、13年12月期には1350億円を目指す。
定期的に買い替えサイクルが訪れる白物家電は安定需要が見込める半面、パナソニックや東芝、日立製作所などの電機大手だけでなく、外資系も多く参入し競争環境は厳しい。
しかし、オーヤマの大山常務は「もともと“門外漢”だった家電で、自由な発想ができるのが当社の強み」と勝ち残りに自信をみせる。
そこに新たな戦力として、電機大手を退職した技術者の知識と経験が加わる。ほとんどの中途採用者は「組織が大きすぎて好きなことができなかった。ここでは自由に商品開発に取り組める」と意気込んでオーヤマに飛び込んだ。
大阪の開発拠点がオープンする5月以降、中途採用者は地元で新商品開発に精を出す。オーヤマの社風にうまく溶け込み、見込み通りの働きをして相乗効果を発揮することができれば、夏にも生活者目線の新商品が登場する予定だ。(米沢文)