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ヨーカ堂、都内初の移動販売 多摩ニュータウン住民の高齢化に対応
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イトーヨーカドー南大沢店が多摩ニュータウンで始めた移動販売には、初日から多くの住民が訪れた=30日午後、東京都多摩市豊ケ丘 セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の総合スーパー大手、イトーヨーカ堂が30日、住民の高齢化が急速に進む東京・多摩ニュータウン(多摩市)で「移動販売」を始めた。4トントラックの荷台を改造した販売車に日用品や生鮮食品など約500種の商品を積み、週1回のペースで4カ所を回る。同HDでは東京都内で行う初の試み。販売が順調に伸びれば実施地域の拡大も検討する。
移動販売を始めたのはイトーヨーカドー南大沢店(八王子市)で、住民や市の要望を受け、2年前から多摩ニュータウンで開いていた「青空市場」を進化させる形をとった。
1971年に入居が始まった多摩ニュータウンでは、子供が独立して高齢の親世代だけが残った世帯が多く、多摩市などによると2年後には高齢化率が全国平均を上回る見通し。団地内では中小型スーパーの撤退が相次ぎ、住民の「買い物難民化」が進んでいる。
南大沢店が始めた移動販売は初日からにぎわい、普段はバスで駅前まで買い物に出るという80歳の女性は「コンビニエンスストアでは精肉などが買えず、坂が多い街なので、重い荷物を長時間持ち歩かずに済むのはうれしい」と喜んでいた。
一方で店側は販売コストがかさむものの、知名度向上や日常以外の買い物で来店増が期待できる。
同店の片桐貞典店長は「“御用聞き”の役割も果たし、利用客の声に応じて品ぞろえも変えていく」と話した。
流通各社の移動販売は東日本大震災の被災地や過疎化の進む地方などで関心を集める一方、東京都港区が生鮮食品店の減少を受け、買い物支援事業を始めるといった動きもある。国の農林水産政策研究所によると、自宅から生鮮食品店まで500メートル以上離れ、車を所有していない高齢者は3大都市圏で140万人にのぼる。流通各社にとって大都市での移動販売は、顧客拡大策の一つとなりそうだ。