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「軽」新車前倒しで総力戦 駆け込み需要想定、性能向上など新鮮味アピール
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軽自動車の販売シェア
エコカー補助金の終了に伴う反動減で自動車の国内販売が低迷する中、軽自動車は2013年の年間販売台数が06年の約202万台を超え、過去最高を7年ぶりに更新するとの見方が強まっている。
約198万台で過去2番目だった12年に比べ、13年1~7月は前年同期比1.3%減の125万8410台にとどまるが、各社が拡販の軸に据えるモデルを今後投入することで伸びが見込まれ、消費税率の来春の引き上げが確定すれば年末商戦で駆け込み需要も期待できるためだ。シェア拡大に向け、各社の顧客争奪戦は激しさを増している。
8月最初の土曜日の3日、都内の日産自動車の販売店では6月発売の軽「デイズ」を目当てに来店した女性らの姿が目立った。都内に住む主婦は「室内がこんなに広いなら、今の小型車から買い替えてもいいかな」と気持ちが傾いた様子だった。
三菱自動車と共同で開発し、満を持して投入した新型軽とあって「日産車で今一番売れていて在庫がほとんどなく、納車まで1カ月以上かかることもある」(販売店の店員)と絶好調だ。「ek」シリーズとして販売する三菱も旧モデルとの比較で3倍前後の売れ行きが続く。
税金の負担が軽く、維持費も安い軽はメーカーが燃費や機能の向上に注力したこともあり、販売は活況を呈している。かつての「セカンドカー」から「ファーストカー」へと位置づけも変わってきた。熾烈な競争を背景にしたユーザーの増加に、消費税増税に伴う駆け込み需要が加われば「期初に180万~185万台とみていた今年の軽市場は210万台に拡大する可能性がある」とダイハツ工業の入江誠・上級執行役員は指摘する。
需要を取り込むためメーカー各社は新車の投入時期を前倒しにする傾向にあり、全面改良を機に新装備や燃費向上を訴求する従来の戦略では商機を逃す恐れも出てきた。
「一部改良の場合でも全面改良並みの変更を加えないと売れない」と、軽大手の幹部は危機感を隠さない。
8月中に発売されるダイハツの「ミライース」も一部改良ながら燃費性能はガソリン1リットル当たり33.4キロと、スズキの軽「アルトエコ」の33.0キロを抜き、ガソリン車でトップに立つ。ダイハツの担当者は「新鮮味のあるクルマを少しでも早く出す必要があり、発売を前倒しした」と打ち明ける。
同社は今秋にファミリー層に人気の高い「タント」の全面改良を控える。衝突回避システムを軽で初めて搭載した「ムーヴ」も12年末の発売以降、好調を維持。1~7月の軽市場で31.7%とトップを走るシェアを総力戦で拡大させたい考えだ。
一方、シェアが29.6%のスズキは衝突回避システムを追加して7月に発売した燃費30.0キロの「ワゴンR」や、3月に発売した室内空間が広い「スペーシア」で販売の積み増しを図る。
鈴木俊宏副社長は「魅力ある商品と営業努力でシェア30%を回復したい」と意気込む。
ホンダは人気の「Nシリーズ」第4弾の「ライフ」を11月にも発売。従来は中心価格帯が120万~150万円と高めだったが、低価格帯の品ぞろえを強化するもよう。日産と三菱はデイズとeKワゴンの好調さを保ちながら、14年初め発売の共同開発第2弾につなぐ戦略を描く。
需要の盛り上がりが予想される一方、販売力や商品力の違いで売れ行きに差が出る可能性もある。各社にとって今年後半は軽の勢力図の塗り替えを懸けた天王山の戦いとなりそうだ。(古川有希、飯田耕司)