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デジカメ危急存亡の秋 スマホが市場侵食、生存競争に拍車

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デジカメ危急存亡の秋 スマホが市場侵食、生存競争に拍車

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 カメラメーカーが収益基盤の強化のみならず、事業の存続をもかけた変革を迫られている。カメラ機能を搭載したスマートフォン(高機能携帯電話)にコンパクトタイプのデジタルカメラの需要を侵食され、メーカーによってはミラーレス一眼も期待ほどは伸びていないためだ。オリンパスや富士フイルムはモデル数の削減に乗り出す一方、ソニーは新たなコンセプトのカメラで、スマホとの共存も模索する。スマホのカメラ機能は新製品が投入されるたびに高度化しており、カメラメーカーの事業規模のさらなる縮小や撤退も現実味を帯び始めている。

 共存狙うソニー新作

 「スマートフォン向けに作り込んだ。(高画質コンパクトデジカメの)『RX100マークII』と同じ性能になる」

 世界最大級の家電見本市「IFA」の開幕を控え、ドイツの首都ベルリンで4日に開いた発表会で、ソニーの平井一夫社長は新開発のレンズ型カメラ「QXシリーズ」を流暢(りゅうちょう)な英語でアピールした。

 交換レンズのような形状をしたQXシリーズは、スマホに装着して、スマホの画面を液晶モニターとして利用する。従来の常識を覆し、デジカメのライバルに成長したスマホを「カメラ化」してしまう製品だ。

 10月25日の発売予定で、上位機種の「QX100」の直販サイト価格は5万4980円。他社からは「デジカメが売れなくなってしまう」「スマホとの連携には手間がかかり、デジカメのほうが利便性がいい」などとQXシリーズに否定的な声も漏れる。

 スマホの影響はソニーも例外ではなく、2013年度のデジカメの販売台数見通しを8月に従来予想より100万台少ない1250万台に下方修正した。ただ、ソニーはデジカメとスマホの両方を手掛ける強みを生かしたい考えで、担当者は「QXはスマホと共存する。デジカメを持っていないスマホ利用者もできるだけ多く取り込みたい」と、新戦略に自信をみせる。

 進む機能高度化

 一方、事業縮小で生き残りを目指すのはオリンパス。笹宏行社長は10日、一眼レフデジカメの新規開発を見合わせると表明した。2万円以下の「Vシリーズ」など低価格のコンパクトデジカメからの撤退や生産拠点の集約も既に決めており、得意とするミラーレス一眼デジカメに経営資源を集中し、カメラ事業の営業赤字の解消を目指す。

 富士フイルムも、コスト削減を目的に6月にデジカメを担当する事業部と放送用レンズなどの事業部を統合。さらに1万円前後のモデルを中心にコンパクトタイプの機種数を半減させ、高価格モデルなどに注力する。

 カメラ映像機器工業会によると、ピークの10年に1億2146万台に達した日本メーカーのデジカメの総出荷台数は、13年は8700万台にまで減る見込み。特にレンズ一体型のコンパクトデジカメの低迷ぶりが目立ち、13年は10年(1億857万台)より約4割少ない6430万台に落ち込むと予測している。

 背景には急速に進むスマホの世界的な普及がある。スマホは撮った写真をその場でメールに添付して送信したり、「フェイスブック」などのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に掲載ができる手軽さが売り。約2000万画素の画像センサーを搭載したモデルが登場するなどカメラ機能の高度化も進み、デジカメ需要の一部を奪っている。

 デジカメの世界シェアで首位を争うキヤノンとニコンの2強も、スマホに押されている。

 コンデジ主体の下位メーカーは撤退も

 キヤノンは7月に13年12月期の連結最終利益の見通しを、従来予想より300億円少ない2600億円に下方修正。コンパクトタイプの年間販売台数は4月に続く2度目の下方修正を余儀なくされ、従来の1450万台を1400万台に引き下げた。

 ニコンも14年3月期のコンパクトタイプの販売台数予想を5月時点の1400万台より250万台少ない1150万台に下方修正。海外の景気減速の影響もあるが、「スマホの影響は否めない」と認める。利益率が高く、各社が注力するミラーレス一眼も「期待ほどは成長していない」(ニコン)という。

 SMBC日興証券の高山裕介アナリストは「コンパクトタイプの需要は今後も減り続ける」と予測する。そうなれば交換レンズの販売で収益を稼げる一眼レフ中心のメーカーはまだしも、コンパクトタイプが主力でシェアも低い下位メーカーは厳しさを増す。高山氏は「事業の赤字が続けば、メーカーは撤退も視野に入れざるを得ない」と指摘している。(田村龍彦)

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