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森下仁丹「ビフィーナ」発売20年 “包む”技術でビフィズス菌を直接腸に
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森下仁丹のサプリメント(栄養補助食品)「ビフィーナ」が発売開始から20年を迎えた。おなじみの口中清涼剤「仁丹」で培われた“包む”技術を応用した独自カプセルで、生きたビフィズス菌を腸に直接届ける。このコンセプトが評価されて女性の人気を集め、ロングセラーにつながった。機能を強化した新商品も投入。なお進化を続けている。
ビフィズス菌は、体に良い有用菌の代表格、乳酸菌の一種。大腸菌などの有害菌の増殖を抑えるとともに、老廃物の排泄や免疫力の向上を促す働きがあるとされる。ただ、空気に触れると死滅しやすく、熱や酸に弱いという欠点がある。
「森下仁丹が持つ高度なカプセル技術なら、生きたビフィズス菌を運べるのではと考えました」
ヘルスケア事業本部サプリメント企画グループの梶田登グループリーダーは、ビフィーナ開発の当初をそう振り返る。
そもそも仁丹が受け入れられたのは、生薬の長期保存を可能にした独自の銀箔(ぎんぱく)によるコーティング技術があったからだ。以来、包む技術をさらに高度化。液体を安定的に閉じ込める継ぎ目のない「シームレスカプセル」は世界が注目する技術だ。
ビフィーナに使われるのは、そのシームレスカプセル技術をさらに進化させた「耐酸性ダブルプロテクトカプセル」だ。「胃酸に弱いビフィズス菌を腸に届けるのに、よろいでも着せられないか」という発想のもと開発。一番外側に耐酸性皮膜と、その内側の植物性食用油脂からなる2重の皮膜でビフィズス菌をしっかりガードする。
ビフィーナ服用後、胃の中では胃酸による溶解を防ぎ、中性の大腸に到達した時点で2つの皮膜がゆっくりと溶け出す。これにより、ビフィズス菌の生存率が70%以上となり、菌を確実に腸に運べるようになった。
今年2月に創業から120年を迎えた森下仁丹。銀粒の口中清涼剤「仁丹」の売上高は1982年には38億円もあったのが、タブレット菓子の台頭で年々減少。「会社として、第2の主力商品がどうしてもほしかった」(経営企画部の磯部美季部長)時期にビフィーナは誕生した。
発売した93年はまだ通販によるサプリメントの市場が確立される前。「いままでのサプリメントにはない製品なので、直接、その良さを消費者に伝えたい」(梶田リーダー)との考えから、通販市場での販売を思いついた。
発売後、すぐに購入者から「長年悩んでいたが快調になった」といった声が届き、通販ながら口コミで評判が急速に広まった。
市場調査会社の富士経済によると、96年から16年連続で乳酸菌・健康食品市場でシェア(市場占有率)トップを維持。2013年3月期の連結売上高96億円のうち、ビフィーナの売上高は32億円と3分の1を占めるまでに成長し、森下仁丹の屋台骨を支える商品となった。
そのビフィーナが、今年9月さらなる進化を遂げた。ビフィーナに使われるカプセルの改良版「ハイパープロテクトカプセル」が登場。内部の皮膜を厚くするとともに、外側の耐酸性皮膜の材質をより酸に強いものに変えることで、ビフィズス菌の生存率を従来の70%から約90%に高めた。
主に通販市場で展開してきたビフィーナだが、販路も広げ、認知度向上を目指す。お試し用もある「ビフィーナビギン」を薬局やドラッグストア、食品スーパーでも販売を始めた。
レモンとラズベリーの2種類の味を用意し、サプリメントが苦手な人や子供でも飲用できるよう、ヨーグルトにかけてもそのままでもおいしく食べられる設計にした。台湾や香港での見本市にも出展するなど、海外展開も模索している。
森下仁丹の社員有志が「ビフィ部」を立ち上げ、もっとビフィズス菌を消費者に知ってもらうための活動も展開。
本社(大阪市中央区)と大阪テクノセンター(大阪府枚方市)の社員約20人で構成するビフィ部の部員は、自らビフィズス菌を継続的に摂取し、腸内環境改善を目指す「ビフィ活」に取り組み、食生活や健康状態を記録する日記を毎日付け、情報発信している。
8月には「ビフィ部」の公式フェイスブックも開設。腸内環境と健康について分かりやすく伝え、ビフィズス菌に関する知識啓発活動に取り組んでいる。
ビフィ部はこのほか、子供向けに排便の大切さを訴える紙芝居を製作し、イベントなどで上演。今後も包む技術の一層の向上を目指すとともに、情報発信力を強化し、ロングセラーを継続させたい考えだ。