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「O2O」スマホ普及で急速に浸透 集客に期待、ネット通販など積極展開

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「O2O」スマホ普及で急速に浸透 集客に期待、ネット通販など積極展開

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「O2O」関連市場規模の予測  商品などの情報をインターネットで配信し、実店舗の集客や販売の拡大につなげるサービス「オンライン・ツー・オフライン(O2O)」が急速に浸透している。

 スマートフォン(高機能携帯電話)の普及やデータ通信の高速化で、外出先でのネット利用者が増えたことが背景にあり、野村総合研究所は2011年度に推計で約24兆4000億円の関連市場が、17年度には約51兆円に達すると予測。通信各社や広告会社も新たな収益源に育てようと参入しており、さまざまなサービスが登場しそうだ。

 百貨店など20社契約

 街を歩いていると、スマホの画面に商品の情報が突然飛び込んでくる。電通系のネット広告大手オプトが米国でO2O事業を展開するリテーリジェンス(米カリフォルニア州)の日本法人と業務提携し7月から本格的に提供しているサービスだ。

 このサービスでは、スマホの位置情報を基に店舗の一定範囲内にあるスマホにバナー広告を配信。広告をクリックすれば誘導先店舗のウェブサイトに画面が変わり、お薦め商品や在庫、地図などの情報を表示して集客を図る。

 今夏にはカメラ販売のキタムラ(横浜市)と共同で試行し、店舗の半径5キロ圏内に配信した。従来のウェブ広告よりも、配信数に対するクリック数の割合(CTR)が高くなる効果が得られることから、大手百貨店やコンビニエンスストアなど20社が契約を結んだ。

 オプトは、店舗内でスマホで商品のバーコードを読み取ると、在庫情報や周辺店舗などを表示する専用アプリ「ショッピッ!」も提供。15年末までに契約店舗数を計2万2000店に増やす目標を掲げる。オムニチャネルソリューション部の久米田晶亮部長は「ポイント制度を使えば価格が割安で、アフターサービスも充実している実店舗の利点を反映させたい」と話す。

 新たなサービスもめじろ押しだ。NTTコミュニケーションズと東京大学は渋谷パルコ(東京都渋谷区)で、無線LANと近距離通信機能「ブルートゥース」を応用した新技術「BeaconCast(ビーコンキャスト)」の実証実験に取り組んでいる。

 来店客が持つ専用アプリを取り込んだ多数のスマホ向けに、イベントやクーポンなどの情報をわずか数秒で配信。実験を担当する東大の中尾彰宏准教授によると、ビーコンと呼ばれる信号で送信すれば、スマホ側では受け取るための「認証」動作が不要となり、伝達速度が向上する仕組みという。

 衣料品のネット通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイが10月末に始めた新サービス「WEAR(ウェア)」は、店内で商品のバーコードをスマホで読み取ると、商品情報や他の商品とのコーディネート画像などがスマホ画面に表示される。

 店舗と融合効果

 O2Oの活用には、ネット通販サイトを立ち上げたばかりの小売店が積極的だという。「ネット通販では商品の使用感を確認できない一方、実店舗では好みの色柄やサイズの在庫がない場合もある。O2Oはこうした不満を解消できる」(流通業界関係者)といい、実店舗との高い融合効果が見込めるためだ。

 ただ、スマホの衛星利用測位システム(GPS)から特定した位置情報を販促に生かす手法がプライバシー侵害にあたるとの指摘があるほか、店頭で下見してネット通販で購入する「ショールーミング」をO2Oが後押しし、実店舗の売り上げを奪う可能性もはらむ。こうした課題の解決が、ビジネスモデルの確立に欠かせない。(鈴木正行)

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