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伊丹開港75周年、関空との棲み分けは? 求められる将来像
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国際空港・伊丹空港=2011年6月19日(本社ヘリから、大塚聡彦撮影) 大阪(伊丹)空港が17日に開港75周年を迎える。平成26年度は、経営基盤強化のため統合した関空と運営権売却(コンセッション)を実施する大きな節目の年だ。より多くの売却益を得るため“二人三脚”で事業価値向上を図る。しかし、伊丹空港自体は今後の大幅な収益増は見込めず「廃港論」もくすぶる。関空との棲み分けをどう図るか、将来像を示すことが求められている。
伊丹空港は昭和14年に、軍民共用の「大阪第二飛行場(伊丹飛行場)」として開場した。第2次世界大戦後、米軍による接収を経て33年に「大阪空港」として再開港。翌年「大阪国際空港」に改称し、国際線の乗り入れも始まった。
高度成長に伴って伊丹空港では発着回数が増え、機材も大型化した。44年に旅客ターミナルビル、45年には3千メートルのB滑走路が供用を開始し、空港はほぼ現在の形となった。拡大する航空需要を取り込み、伊丹空港は賑わいをみせた。
半面、「利便性が高い都市型空港の弊害も顕在化」(業界関係者)していった。周辺地域で騒音や排ガスの環境問題が発生し、午前7時以前、午後9時以降の民間機発着が禁止され、1日の発着回数も370回に制限された。
このころから、増大する航空需要を支え、伊丹空港周辺の環境問題も緩和する空港として、新空港整備の必要性を説く声が強まった。平成6年に大阪・泉州沖に関空が開港すると、伊丹空港の国際線は関空に移管された。
だが、関空は開港後、交通の不便さなどで利用が想定ほど伸びず、建設のために抱えた巨額の負債に悩まされた。
その一方で京阪神都市圏のほぼ中央に位置する伊丹空港は、交通の便も良く、比較的堅調な業績を維持した。このため「伊丹空港の利益による関空の負債補填を狙い、一体経営が模索された」(別の業界関係者)。
24年には新たに発足した新関西国際空港会社のもとで、伊丹空港と関空の経営統合が実現。伊丹空港は、新関空会社の屋台骨を支える存在となった。
伊丹空港では25年から、旅客数を増やすため、段階的にプロペラ機発着枠を低騒音ジェット機枠に切り替えているほか、駐車場の有効活用も検討している。
新関空会社は同年、ターミナルビルを運営する「大阪国際空港ターミナル(OAT)」を完全子会社化。今後、大規模改修などで両空港の使い勝手を良くし、収益力を高める考えだ。
伸び悩んでいた関空だったが、風向きが変わってきた。格安航空会社(LCC)の台頭に合わせ、誘致を積極化。ピーチ・アビエーションなどの就航が相次ぎ、国内線でも存在感を増している。
半面、伊丹空港は発着の規制が残り、国内線しかないこともあって大幅な収益増は見込めない状況にある。地元自治体などには国際線復活などを通じた伊丹空港の活性化を望む声があるものの、「廃港論がくすぶ中、大幅な拡張や投資を行うのは難しい」(関係者)。
それでも、関西、東アジア圏の航空需要に応えるためには関空と伊丹の効率的な運営が欠かせない。さらには神戸空港を含め関西3空港の一体的な運用を求める声も強まる。早期にビジョンを打ち出すことが、コンセッションを成功させ、各空港を成長軌道にのせるために必要になる。
新関空港会社は、コンセッションで総額約1兆2千億円の負債を国などに完済したい考えだが、思惑通りに進むかは不透明だ。同社はより高値で売却するために、関係各方面と運営期間など売却条件の検討を進めている。
コンセッションは平成26年度内の実施を予定している。「27年度からの業務移管を考えると、秋ごろまでに決める必要がある」(関係者)ため、夏にも1次入札を行う見通しだ。現在はコンセッション後の空港運営の指針となる「実施方針」の策定作業が進められている。
新関空港会社は、3月末までに着陸料の設定などを含めた空港運営の条件はどうあるべきか、関心を持っている企業や投資家に意見を求め、内容を実施方針に反映することにしている。入札に参加しやすい条件を盛り込むことで参加者を増やすのが狙い。競り合いになって高値で売却しやすくなるとみている。
4月以降は、26年3月期決算資料などを含めた両空港の経営状況や今後の収益予測なども開示。国交省との協議、承認を得た実施方針を提示し、夏の1次入札へと至る。
入札には大手商社やゼネコン、金融機関が関心を示しているもようで、インフラ投資の実績を持つ海外の年金基金や空港運営会社も参加する見通し。コンソーシアム(企業連合)を組成して応札するとみられる。
落札した事業体が両空港を運営する期間は40~50年になるとみられ、新関空会社は運営権売却で約1兆2千億円の負債完済を目指す考えだ。しかし、現在の収益力から換算した運営権の売却額は6千億~8千億円に留まるとの見方も強く、一括返済を受けたい財務省との調整が難航する可能性もある。