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築50年の団地がおしゃれに“変身” 「こわしすぎず、つくりすぎない」

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築50年の団地がおしゃれに“変身” 「こわしすぎず、つくりすぎない」

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「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」で、洗練されたダイニングキッチンに生まれ変わった東豊中第2団地の室内=大阪府豊中市(上)(ムジ・ネット、都市再生機構提供)。外観は築40年以上の団地(下)だが、安い賃料と広さ、内装の充実で若者から人気を集めている  一昔前の画一的なファミリー向け-というイメージが強かった「団地」が今、若者に人気だ。理由は、ファミリー向けの広さがありながら低価格な物件に、DIY(自分で作る)や、デザイナーなどによる「おしゃれ」で「斬新」なリノベーションを実現したこと。都市再生機構(UR都市機構)では、2年前に大阪で始めた団地リノベーション事業が絶好調で、新しいビジネスモデルとして首都圏などにも広がり始めている。

 エレベーターなしでも「景色良い」と人気

 窓に面した真っ白な流し台と、同サイズのダイニングテーブル、長スツールが標準装備という洗練されたダイニングキッチン。稼働式の「ダンボールふすま」の使い方次第で部屋の数を変えられる「伸び縮み自在」なLDK…。URが雑貨チェーン「無印良品」グループのムジ・ネットと共同展開するUR団地は、とても築40~50年の「団地」とは思えないおしゃれな内装だ。

 24年6月から始まったコラボ事業のコンセプトは、「こわしすぎず、つくりすぎない」。

 昭和30年に日本住宅公団として発足以来、日本の暮らしのスタンダードを追究してきたURと、「生活美学の専門店」を目指す無印良品が、団地の持つ可能性を生かしつつ、新たな賃貸リノベーションのスタンダードを発信しよう-と、大阪の「新千里西町」(豊中市)、「泉北茶山台二丁」(堺市)、「リバーサイドしろきた」(大阪市)の3団地からリノベーションを始めた。

 いずれも昭和40~50年代に供給されたファミリー向けの40平方メートル以上の物件。部屋数の多さや間取り、老朽化した設備などから“時代遅れ”感が強かったが、リノベーションを経た部屋は、「民間の賃貸住宅より安めの家賃なうえ広く、おしゃれ」な造りが人気を呼び、応募倍率は平均6倍とこれまでの倍に。

 エレベーターがないため空室が目立っていた4~5階も、若者層から「景色が良い」と、逆に人気物件になり、URは「エレベーター設置も検討したが、リノベーションで課題は解決できると分かった」と胸をなで下ろした。

 老朽化・高齢化で空室増え…

 昭和30~40年代の高度経済成長期に相次ぎ建設されたUR団地が直面する最大の課題は、老朽化と住民の高齢化だ。特に、エレベーターのない5階建て団地は敬遠され、空き家も目立っている。団地にいかに若者層を呼び込み、活性化させるかが最大のテーマだった。

 平成19年、URは本格的な少子高齢化、人口・世帯減少社会の到来にあわせ、平成30年までの「賃貸住宅ストック再生・再編方針」を策定。既存住宅77万戸のうち、まちづくり再生が必要な16万戸で「団地再生」事業を行うとした。ムジ・ネットとのコラボはこの一環だ。

 「無印良品の家」注文住宅事業を展開するムジ・ネットの田鎖郁男専務は、「欧米には百年住宅が数多くあるが、日本の住宅はすぐ壊されてしまう。長く使われ、変えられる家を提供したい」とコラボ事業への思いを語る。

 当時、「合理的で機能重視」な住まいとして建築されたURの団地は、「簡素・簡潔、無駄を配する」(田鎖氏)という無印の商品づくりの考え方にも合致していた。「団地」と「生活スタイル」のプロ同士のコラボは昨年度、グッドデザイン賞も受賞。いわゆる「デザイナーズ物件」に決してひけをとらないことを証明してみせた。

 シェアハウス、女子大とのコラボ、新商品販売も

 大阪で始まったURと無印のコラボ団地。「日本の住まい方を変えていける」と大西誠・UR都市機構西日本支社長が自信を見せるこの事業は、昨年末までに大阪の3団地36戸で入居者を募集。結果、申込者の7割が20~30代で「こんなことは初めて」と、関係者を感激させた。

 新千里西町団地(豊中市)では昨年11月から、20代の男子大学生ら3人が「シェアハウス」として共同生活する様子をネットを通じて発信。若者による地域コミュニティー再生も進めている。コラボ相手も無印だけでなく、京都女子大と築30年以上の「洛西竹の里団地」(京都市西京区)リノベーションにも取り組んだ。

 建て替えや大型改装よりも経費は少なく、新しいビジネスモデルとして期待できるコラボ団地。今年、「無印」コラボ団地は首都圏にも進出し、東京都板橋区の高島平団地(15戸)を含む3団地37戸で入居者を募集した。今春からは、全国の無印良品の大型店舗を中心に、コラボ事業を通じて誕生した共同開発商品の販売も新たに始める予定で、コラボを通じたビジネスチャンスは拡大している。

 古くて使い勝手が悪く、敬遠されていた「団地」を人気物件に変えるリノベーション。現代のニーズをいかに取り込みながら展開できるか、今後が注目される。

(西川博明)

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