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【クルマ人】あえて燃費性能こだわらず 三菱自「eKスペース」開発の狙い

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【クルマ人】あえて燃費性能こだわらず 三菱自「eKスペース」開発の狙い

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新型軽自動車「eKスペース」と三菱自動車の益子修社長  三菱自動車は2月13日、日産自動車と共同開発した新型軽自動車「eKスペース」を発売した。スーパーハイトワゴンと呼ばれる車高が高いタイプで、価格は122万4300~177万5550円。ガソリン1リットル当たりの走行距離は最大26.0キロ。子育て中の若い主婦がターゲットで、室内空間の広さや、荷物で両手がふさがっていても開け閉めしやすい電動スライドドアなど便利な機能を充実させた。同社の秋田義雄プロダクトエグゼクティブに開発の狙いについて聞いた。

 --eKスペースのアピールポイントは

 「リアシート(後部座席)の居住空間を最大限に有効活用しながら、気に入ってもらえるようなアイデアをそこらじゅうにちりばめた車だ。スーパーハイトワゴンは背高のっぽで乗り降りが非常に楽。各社ともリアの居住性、広さ感、快適性を狙ってくる。eKスペースもそこには特にこだわりながら、いかに差別化を図るか考えた。まず室内高は小学生の子供が着替えをできる1.4メートルを確保し、シートのスライド幅を大きくして運転席や助手席の両親がリアに座った子供に触れられるようにした。リアは空調が届きにくく夏暑く、冬寒いという指摘があり、サーキュレーター(送風機)も設置した。スーパーハイトは窓ガラスが非常に大きいので、夏場にまぶしくないようロール式のサンシェードもつけている」

 --女性目線、子供目線で開発した

 「三菱自として初めてのスーパーハイトワゴンだ。30歳の4人家族で3歳と1歳の子供がいる、というターゲットを想定して、2012年のはじめごろから、競合他社(ダイハツ工業、スズキ、ホンダ)のユーザーから直接聞き取りをして、お客さんが求めているものを探った。その結果出てきたのが、『後ろの子供が夏になると汗だくで寝ているのよ』とか、『窓ガラスに吸盤で貼り付ける日よけは外れやすくて困る』といった指摘だ。競合車種と並べて使ってもらい、改善点を探ったりもした」

 --燃費性能は他社の競合車種に比べて劣るが

 「スーパーハイトワゴンに求められる要素は、一番が広さ感、次が使い勝手だ。燃費はさほど重視していない。ユーザーの聞き取り調査でも、『(燃費の)カタログ値って私たちが運転しても出ないよね』『どの社も小数点以下の数字で勝負しているけれど、1リットル当たり5キロぐらいの差だったら格好いいほうを選ぶよね』といった声が出ている。5キロといったら大きな差だが、ユーザーの感覚は開発者の感覚とは異なるようだ。そこで安全装備や快適に走れるエンジンの性能などを重視して開発を進めたら、燃費の優先順位がだんだん下がってきた。エコカー免税を取得できる範囲には当然収めるが、それ以上はこだわらなかった」

 --各社がこぞって入れている衝突回避装置は搭載されていない

 「企画段階では、衝突回避装置はあるに越したことはないけれど、コスト的に高くつくということでためらった。ここまで世の中がこの装置を求めるようになるとは思わず、読みが甘かったのは否めない。準備ができ次第、なるべく早く搭載するようにしたい」

 --共同開発した日産自動車デイズルークスとの差別化は

 「基本的には、日産と三菱を出して4強に入りましょうというのがポリシーだ。単独で狙っているわけではなく、ベーシックにはまったくといっていいぐらい同じ車だ。でも、日産や三菱のマークをつけるとき、少しでも各社の個性、車に対するアイデンティティーは出したかった。そこで独自のデザインを入れている。三菱は柔らかいけれど力強さがあるデザインをイメージ。特に(上級モデルの)カスタムは『デリカD:5』のような縦3本線のフロントグリルを持ってきたら、社内でも評判がよく、それを採用した」

 秋田義雄(あきた・よしお) 同志社大大学院終了。1980年、三菱自動車入社。ミツビシ・モーターズ・ヨーロッパ駐在などを経て、プロダクトエグゼクティブとして初代パジェロスポーツやeKワゴンのプロジェクト統括を務めた。59歳。大阪府出身。

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