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常識破りの“脱・石油タイヤ” 住友ゴム「エナセーブ100」開発物語

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常識破りの“脱・石油タイヤ” 住友ゴム「エナセーブ100」開発物語

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住友ゴム工業本社で展示されている世界初の石油を使わないタイヤ「エナセーブ100」(手前)=神戸市中央区  住友ゴム工業が昨年11月に発売した石油系素材を全く使わない世界初のタイヤ「エナセーブ100」。「ダンロップ」ブランドなどで展開する同社のタイヤ技術を結集し、世界にその開発力を示した製品だ。開発の原点は、会社の上層部から平成12年に、技術開発本部の若手社員らに下った「21世紀に向け、会社の将来のあるべき姿を考えてくれ」との指示。この時、若手技術者らが出した答えの1つが、環境・省資源化に配慮した「石油を使わないタイヤ」という開発発想だった。

 「このアイデアをやろう」。若手らの開発アイデアが経営陣の目にとまり、会社の中長期計画の一環として13年に、「脱・石油」タイヤという業界の常識破りに挑む開発プロジェクトが正式に始動した。

 一般的なタイヤは、石油由来の素材が6割前後使われている。脱・石油の実現にはこれを石油系以外の素材にすべて置き換え、同時に従来製品と遜色(そんしょく)ない性能を実現する高いハードルを超える必要があった。

 「タイヤの基本性能は満足できないが、とりあえず素材を集めて作り上げた」(関係者)。プロジェクトは、まずは脱・石油のコンセプトを優先し、非石油由来の素材を97%使った試作品を作成。これを13年の東京モーターショーに展示したところ、予想以上の反響があった。

 開発の方向性に手応えを得たところで、同社にとって国産第1号のタイヤ製造から100年の節目に当たる25年の市販化をゴールに定め、非石油系素材比率の拡大と性能の両立を3段階のステップを踏む形で開発に取り組んだ。

 「目標はあったが、(開発技術の裏付けなど)中身がなかった。半端ないプレッシャーだった」。16年から素材開発に携わってきた和田孝雄材料企画部課長は振り返る。

 最初に着手したのは、石油系素材の天然素材への切り替えだ。タイヤの主原料である合成ゴムを天然ゴムへ、タイヤの補強剤となるカーボンブラックはシリカへ、鉱物油は植物油へ-と、素材の代替を進めていった。

 ただ、天然ゴム製のタイヤには雨の路面でブレーキをかけて、車が停止するまでの制動距離に課題があった。「合成ゴム製が50メートルならば、天然ゴム製では70メートルかかる」(和田課長)という安全面の懸念だ。

 解決策となったのは天然ゴムの性質を変える「改質」技術だ。「ENR(エボリューショナル・ナチュラル・ラバー)」と名付けた独自技術を開発し、燃費に関連するタイヤの転がり抵抗を天然ゴム並みに抑えつつ、雨の路面上では合成ゴム並みのブレーキ性能を発揮する改質を実現。非石油系で「低燃費性と安全性を両立させた素材ができあがった」(和田課長)。

 18年からタイヤ設計でプロジェクトにかかわってきた向井友幸第5技術部課長代理は「合成ゴムと天然ゴムでは車の乗り心地も違う。天然ゴムの良さを生かしながら、合成ゴムの性能に遜色ないものを出すのに苦労した」と明かす。

 ここまでは技術で何とか97%の「脱・石油」を実現できたが、残り3%の素材変更が最大の難関だった。当時は必要な素材について大量生産技術が確立されていなかったため、壁にぶち当たっていた。「できるかどうか不安だった」(和田課長)が、この局面を打開するには新素材を開発するしかなかった。

 社内外の知見を得て、使えるバイオ・触媒技術をフルに活用。トウモロコシや松の木油、菜の花といったバイオマスを原材料に取り入れ、タイヤのひび割れなどの劣化を防止する老化防止剤、ゴムと硫黄の結合を促進させる加硫促進剤などの「脱・石油」化にたどり着いた。「素材の配合を変え、自分たちが狙ったタイヤの性能に向けて改良を重ねる」(新素材開発担当の広真誉材料第1部課長代理)試行錯誤の末の成果だった。

 こうして発売を1カ月後に控えた25年10月、「脱・石油」100%タイヤの量産がスタート。「常に先進技術とともに歩んできた」(中瀬古広三郎常務)という住友ゴム工業の歴史に、世界に誇る製品が新たに刻まれた。(西川博明)

 エナセーブ100 住友ゴム工業が発売した原材料に石油を一切使わない乗用車用タイヤ。世界で初めて商品化した。一般的なタイヤは合成ゴムなど石油由来の原材料が全体の約6割を占める。

 エナセーブ100は天然ゴムを主原料とするなど、石油由来の素材をすべて天然資源に置き換えた。タイヤの摩耗に耐えられる強さを同社の従来品の約1.2倍に高めるなど、性能面も向上させた。当面は1サイズ(排気量2000ccクラス向け=タイヤ幅195ミリ)のみ。初年度5000本の販売を目指す。

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