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「ものづくり」は基礎力にすぎず 欧州自動車メーカーの「先」を狙え

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「ものづくり」は基礎力にすぎず 欧州自動車メーカーの「先」を狙え

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マツダの小型車「マツダ2(デミオ)」の後継機種として開発が進められている試作車「HAZUMI(ハズミ)」=4日、ジュネーブ 【ビジネスアイコラム】

 16日に閉幕したジュネーブ・モーターショーでは、欧州ブランドの優位性を再び見せつけられた。その中でキラリと光るコンセプトカーがマツダの「跳(HAZUMI)」であった。

 近い将来に「デミオ」となるコンセプトカーだ。欧州メーカーに負けないデザイン性とスカイアクティブ技術に基づいた存在感は押され気味の日本勢の中で気を吐く。

 将来導入する車種を全体で効率化する一括企画、車体の基本構造を共通化するコモン・アーキテクチャー、スカイアクティブ技術など“ものづくり革新”を核に、同社は企業再生を手中にし始めている。日本のお家芸であるものづくりの力を見事に復活に生かした。

 ところが、このものづくりの力に頼るだけでは、日本の自動車産業の国際競争力を維持するのに危うさを感じざるを得ない。新興国も巻き込んだクルマの環境・安全規制強化と加速度的なエレクトロニクス化の流れを受け、設計概念(アーキテクチャー)の標準化とオープン化が加速しており、欧州勢がこの進化を強く主導している。

 独フォルクスワーゲンの有名な「MQB」プラットフォームがその代表格。モジュール化を進め、500万台規模で共有できるメガプラットフォーム戦略を推進する。こうしたアーキテクチャーの進化は、日本のものづくりの優位性を凌駕(りょうが)する可能性があろう。そうなれば、ものづくりはもはや基礎力にすぎず、自動車ビジネスは応用力の戦いに移行する構図が見え始める。

 ブランド、デザイン、テレマティックス(情報通信)を複合的に組み合わせ、魅力的なビジネスモデルを構築することで欧州ブランドは先行している。実際、ジュネーブ・モーターショーでは、ドライバーが運転中に自由に米アップルのiPhone(アイフォーン)を操作・表示できるアップルの新しいシステム「CarPlay」を搭載し、スマホとクルマが一体化する新しいモデルが数多く展示された。

 独メルセデスは「Mercedes me」と銘打った新しいサービスブランドを今年夏に立ち上げ、「CarPlay」にとどまらず、スマート腕時計やグーグル・グラスなどの新しいヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)と連動するサービスで先行する考えだ。

 世界の自動車産業では過去10年間、欧州メーカーの勢いが著しい。戦略性の高い商品にフォーカスし、不得意な分野は水平分業へ移行。同時に先進的な技術でリードし、標準化を進めてきた。コンソーシアムを形成し、パートナーを囲い込み、もうける領域をどんどん固めてきている。

 日本の自動車産業はものづくりの成功体験に安住せず、標準化されオープンな欧州メーカーのプラットフォーム戦略を謙虚に学び直すべきだ。ただし、欧州勢の戦略への迎合では囲い込みを狙うライバルの思う壺(つぼ)となる。

 「すり合わせ」や「現場主義」の名の下、日本企業の体質は膠着(こうちゃく)した慣れあい主義にも映る。人材や知財の流動性も低く、産官学間の風通しの悪さも含め、反省すべき点は多い。エレクトロニクスで勝利できなかった日本にとって、自動車産業は重要な砦(とりで)である。横断的なリーダーシップが強く求められ、将来を見据えた胆力が必要となる局面に立つ。(自動車コンサルタント 中西孝樹)

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