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補聴器、国内外メーカーの攻防激化 高齢化で市場拡大、機能やデザイン強化
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補聴器の国内出荷台数 高齢化の進展で需要が見込める国内補聴器市場で、国内メーカーと海外メーカーの攻防が激しさを増してきた。国内市場の規模は欧米並みに普及が進むと約300億円から数千億円に膨らむ可能性がある。福祉先進国を背景に高い技術力で強化を図る海外勢に対し、国内勢も普及の妨げになっている補聴器のネガティブなイメージなどを払拭しようと、装着したまま洗髪できるよう防水機能を強化したり、色彩を重視したりするなど、工夫を凝らしている。
国内最大手のリオンは高齢者が使いやすいような改善に注力する。7月に発売した耳かけタイプ「スプラッシュ」は防水機能を強化し、入浴やランニングをするときでも装着できる。
同社事業企画部の宗崎正部長は「今のシニアは元気で行動的。幅広く屋外利用ができるよう耐久性を向上した」と話す。同社の予想より2割増しの勢いで売れている。1日には公益財団法人日本デザイン振興会の「グッドデザイン賞」に選ばれた。
同社は、小型化する補聴器で難点だった電池交換の煩わしさに着目。電池のプラス極とマイナス極を自動で識別する独自技術を開発した。さらに、熱や湿度に強い小型マイクロホンを開発、2015年度中の製品化に向け量産化を進めている。
パナソニック補聴器(横浜市)は、耳かけタイプの主力製品「R1」で、緑や青など8色に加えて漆調のデザイン3種類を用意し、和服にも合わせやすくした。本体を覆うカバーも別売りしており、着せ替え感覚で取り換えることができる。「デザイン性を重視し、心理的な抵抗を下げる」(企画担当者)戦略で、需要を取り込む。
世界3強の一つ、独シーメンス系で国内2位のシーメンス・ヒヤリング・インスツルメンツ(相模原市)は耳に入れると、ほぼ隠れる耳穴タイプの補聴器で攻勢をかける。微細加工技術を結集した「インシオ マイコン」は、出力不足になる小型化の欠点を解消するだけでなく、36種類の色を用意した。「補聴器を積極的に見て選んでつけて、楽しんでほしい」(同社)との考えだ。技術に加え、斬新なアイデアで国内首位の座を狙う。
一方、デンマークの補聴器大手、ワイデックスの日本法人(東京都墨田区)は5月、補聴器とスマートフォンを有線でつなぐリモコンを発売した。スマホとリモコンの間の接続は無線が主流だが、端末の操作に不慣れな高齢者には設定が難しいとして、有線タイプを投入。リモコンのプラグをスマホのイヤホンジャックに差すだけで、スマホの音を直接、補聴器で聞けるようにした。
国内外のメーカーがここにきて製品ラインアップを充実させているのは、国内の高齢化で補聴器の使用者が増えるとみられるからだ。
日本補聴器工業会(東京都千代田区)によると、国内出荷台数は13年で52万8789台となり、4年続けて過去最高を更新。出荷金額は313億円で初めて300億円を突破した。
ただ、難聴を自覚している人のうち補聴器を使っている割合は14.1%にとどまる。英国の41.1%、ドイツの34.0%に比べ、国内での潜在需要は高く、高齢化とともに普及率が上がれば、市場規模が数千億円に拡大するとの見方もある。
欧米では、補聴器販売業者に公的資格制度が導入されており、医師による診断や有資格者による聴力検査、耳型採取など、利用者が補聴器を受け入れやすい環境が整っている。日本でも業界全体でこうした制度の確立を目指す動きが進む。
ただ、聴覚障害者と健聴者との間に位置する難聴者の間では「補聴器を恥ずかしいと感じる風潮も根強い」(同工業会)とされる。メーカー各社は利便性を高めた製品の開発だけでなく、早期装着が効果を高めるなど製品への理解を深める取り組みも重要になってくる。(佐藤克史)