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【浜松物語】常に新しさに挑戦、ピアノも音楽教室も …中田卓也ヤマハ社長(下)
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全国1400会場で展開している「大人の音楽教室」。入会者の約7割が初心者だ □浜松物語 「やらまいか」精神を訪ねて(8) 中田卓也ヤマハ社長(下)
--ヤマハがモットーにしていることは何か
「常に新しいものを提案していくことがヤマハの姿だと考えている。ヤマハが128年も続いてきたのは、常に新しさを追求してきたからで、何かを守り通そうとしていたら、この規模でグローバル展開をしている会社がここまで長く続くことはなかったと思う」
--今年3月20日に新製品「トランスアコースティックピアノ」を発売した。アコースティックピアノでありながら音量調節が可能で、ピアノ以外の楽器音でも演奏できる
「ピアノはある意味、完成されている製品で、多少良くしたところで、お客さまの買い替え需要にはつながりにくい。そこでトランスアコースティックピアノは夜でも弾けて、タッチも変わらないようにした。『お母さんの頃は(ピアノで)こんなことはできなかった』という利便性とベネフィットを提案すれば、新しい商品に買い替えていただけると考えている」
--ソフト面の展開では「大人の音楽教室」も盛況で、小学生のためのジュニアスクールでは5月にドラムコース、ギターコースも開講される
「1954年にオルガン教室として開講したヤマハ音楽教室で培ってきたノウハウを使い、もっと新しい提案ができないかという発想だ。ヤマハ音楽教室は必ずしもピアノを弾くだけではなく、音楽を楽しむ力を身につけていただくための教室。その根底に、われわれの企業理念にも記されている『新たな感動と豊かな文化』を創るお手伝いをしたいという思いがある」
--マレーシアを皮切りに東南アジアで音楽教室も強化する
「70年代から東南アジアで音楽教室を展開しているが、アプローチを変える。これまで日本と同じ内容を現地でこだわって実施してきたが、国によってはかなりハードルが高い部分がある。マレーシアでは学校と連携し、現地に合ったアプローチを進める。ヤマハ音楽教室は海外にも約16万人の生徒がいるが、パラダイムを転換すれば、もっと広がるはずだ」
--ヤマハは今後どんな方向に進んでいくのか
「『世界ナンバーワンの楽器メーカー』とよく言われるが、総合的なブランド力ではそうでも、個々の製品を見ると、まだ世界一になっていないものがある。各分野で存在感を増すような取り組みを行い、『さすがヤマハだ』といわれる製品を出していく。今のポジションに満足していてはならない」
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中田社長も「大人の音楽教室」でギターを学び、余暇に音楽を楽しむ一人。創業者の山葉寅楠(とらくす)が、日本の音楽教育に資するという志を抱き、起業してから128年がたつ今、ヤマハは「やらまいか精神」のDNAを継承し、時代を先駆けるパイオニアであり続けようとしている。