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あの松ちゃんにもウケた“カバン芸” 猪瀬氏の悲しい幕引き
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5000万円を運んだバッグに札束相当の白い箱を押し込み、チャックが閉まらないことを指摘される猪瀬直樹氏(右)=16日、都総務委員会
就任1年で東京都知事を辞職した猪瀬直樹氏。ネットでの発信に熱心な半面、ネット住民からの毀誉褒貶(きよほうへん)も激しかった。東日本大震災での救助対応は称賛され、英語でのツイッターやプレゼンテーションは「つたなすぎる」と批判。五輪招致で頂点に達した評価は、5000万円問題で地に落ちた。最後は「カバン芸」がもの悲しい幕引き役となった。
「オレの今年の面白かったベスト10。。。猪瀬知事のカバンのくだり入るかも。。。」
ツイッターで19日にこうつぶやいたのは、お笑いコンビ、ダウンタウンの松本人志さん。16日の都総務委員会で、5000万円を模した白い箱を猪瀬氏が無理やり自分のカバンに押し込んだものの、チャックが閉まらず往生する様子はテレビでも繰り返し流れた。ネット上のニュースでも「コントかよ」などの見出しで報じられ、笑いのプロの松本さんに評価されたことでさらに話題になった。
都副知事時代には、平成23年の大震災発生当日、自身のツイッターに「宮城県気仙沼市の施設に子供たちが取り残されている」という情報が届くと、それを即座に東京消防庁の幹部に伝え、東京から応援ヘリが現地に飛んで子供たちが救出される一幕があった。
これには「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した救助・援助の新しい形を見られた気がします」「感動した」「すごいつながり」と猪瀬氏を称賛する声が相次いだ。
今年9月、五輪招致に成功した瞬間が、猪瀬氏のネット上の評価のピークだったのかもしれない。
その五輪招致活動をめぐっては、今年1月に英語で東京五輪の魅力をPRするツイートを始めたことに対し、文法ミスと単語の間違いの指摘が相次ぎ、「都民の恥」などと罵声も浴びせられた。
ただし、これには「猪瀬さんの英語を恥ずかしがる人が恥ずかしい」などとして、ミスは指摘しながらも猪瀬氏の積極姿勢を評価する声も存在した。
同様の批判と擁護は五輪招致の英語プレゼンでも繰り返された。「英語が堪能でなくても、ここまで堂々と身ぶり手ぶりで英語でスピーチをする姿は見習ってもよいのではないでしょうか」(個人ブログから)
だが、5000万円の疑惑をめぐる記者会見や都議会での答弁には、プレゼンで見せたような力あふれる語りは見る影もなく、ネット上でもからかいの対象になるしかなかった。
11月26日に5000万円の「借用証」を公表した際は「こんな文章小学生でも作れる」「これで(疑惑を)乗り切ろうという勇気だけは買おう」などと盛り上がり、猪瀬氏が掲げた紙の文字を「勝訴」「平成」などと書き換えたお遊び画像が多数登場。
都総務委員会でカバンに白い箱を押し込もうとする姿は、当事者たちが懸命であるほどおかしみがこみ上げるチャプリンの映画のようだった。
「猪瀬さんオリンピック招致に頑張ってくれたのになぁ。悪いことは悪いことだけど、かわいそうって気持ちもある」(ツイッターから)
ネットという巨大な「目」から観察と突っ込みを受け続けた猪瀬氏は25日、「しばらくは、自ら深く反省し、静かに振り返る時間を持ちたいと思います」とツイッターに書き込んだ。
ノンフィクション作家として、ネット時代の権力者の肖像を描く機会は来るのだろうか。(光)
猪瀬氏は昭和21年、長野県生まれ。62年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞。道路公団民営化推進委員会委員、東京都副知事などをへて平成24年12月、都知事に史上最多得票で初当選した。その前月の同11月に医療法人徳洲会グループから5千万円を受け取っていたことが最近発覚。「借入金」と主張したが都議会などで理解を得られず、辞任に追い込まれた。