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メタボ予防プログラムを開発 途上国向けに国立国際医療センター
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独立行政法人「国立国際医療研究センター」が、インターネットを使った発展途上国向けの生活習慣病「予防プログラム」を独自開発し、実用化に成功したことが2日、分かった。支援国の食習慣などとの因果関係を解析し、その国の事情に合った減量メニューを実現した。コンピューターソフトを使っての本格的な途上国向け生活習慣病対策は、ほとんど例がない。第1弾として現在、糖尿病患者が310万人超とされるベトナム向けに提供。今後、国際医療貢献の新たな「日本型モデル」として各国に広げていく。
開発したのは、同センター臨床研究支援部室長の松下由実医師を代表とするチーム。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策で実績を上げた日本のプログラムをベースに改良を加えた。
生活習慣病は、食文化や生活スタイルが大きく影響することから、その国に合わせてプログラムを組み替える必要がある。このため、松下氏らは7年前から、ベトナム政府や国立病院などの協力を得て、現地の食習慣などを調査・研究してきた。
毎日の摂取量を減らす「食事目標」の予防項目に、フォーやベトナムコーヒーなどベトナム人が好む食品を含めた。センターは「ベトナム用をアレンジすることで、各国に対応できる」としている。
具体的な使い方は、患者や予備軍がスマートフォン(高機能携帯電話)のアプリなどからプログラムにアクセスし、「ビールの摂取量を減らす」「ウオーキングを行う」といった予防メニューを選択。医師など専門家の指導を受けながら一定期間予防に取り組み、症状の改善に結びつける。
ネット環境さえ整っていれば使えるため、医師が遠隔地から指導することも可能だ。松下氏は「医療人材が不足している多くのエリアで役立つ」としている。
同センターが途上国の生活習慣病対策に乗り出したのは、経済発展に伴い、富裕層を中心に患者が急増してきたため。国際糖尿病連合は、2030年のインドネシアの糖尿病人口について、現在の1・5倍に当たる1180万人、フィリピンは743万人などと予測している。
ところが、多くの国では健診システムが未整備で、専門家も不足。無自覚で放置されるケースが多く、世界保健機関(WHO)も警告を発してきた。
センターは、指導医の育成や地域における健診態勢づくりを含めた総合的なシステムとして提供し、途上国に生活習慣病対策が根付くよう支援を行う。