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牛の生レバー解禁いつ? 放射線照射で十分な殺菌効果

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牛の生レバー解禁いつ? 放射線照射で十分な殺菌効果

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 内部に腸管出血性大腸菌O(オー)157がいる可能性があるため、生食用の提供が禁止されている牛のレバー(肝臓)。厚生労働省研究班の研究で、放射線照射で十分殺菌できることは既に確認されている。しかし、厚労省は「より詳細な安全性の検討が必要」とし、さらなる調査を継続中。いつ、生レバーは解禁されるのか-。(平沢裕子)

 ■影響は100億円超?

 牛の生レバーはO157などによる食中毒を起こす可能性があるとして昨年7月、厚労省が飲食店での提供・販売を禁止した。しかし、禁止にあたってのパブリックコメントには1500件に上る反対意見が寄せられた。試算では百数十億円の経済的影響があるとされ、一日も早い禁止解除が望まれている。

 レバー内部の大腸菌を殺すには加熱するのが一番。しかし、加熱すると生レバー特有の食感や味、風味などが失われてしまう。そのため厚労省は、海外で食肉や香辛料などに使用されている放射線照射でレバー内部の殺菌が可能かどうかを検証。O157を大量に注入した冷蔵と冷凍の生レバーにガンマ線を照射し、加熱と同じ水準で菌が殺せるかどうか調べた。

 その結果、冷蔵は約3キログレイ、冷凍は約5キログレイの照射で、十分な殺菌効果が見込めることが分かった。ただ、海外でひき肉の殺菌は1キログレイの線量で十分との報告もあり、担当者は「レバー内部の殺菌には当初思っていたよりも高い線量が必要だった」と打ち明ける。しかし、食品の規格を決める国際機関「コーデックス委員会」が定める線量の上限は原則10キログレイ(正当な必要性があれば10キログレイ以上も可)で、冷蔵・冷凍ともに実用化に問題のない線量といえる。

 ■ビタミン減少も

 レバーの生食にはビタミンが取れるメリットもある。冷蔵の場合、照射によってビタミンB1が87%に減少、ビタミンCとビタミンB6もわずかに減少していた。冷凍の場合は影響がなく、また、冷蔵・冷凍ともに脂質やタンパク質、水分などの栄養成分は変わらなかった。

 見た目やにおい、味が照射によって変わるかどうかも大事な要素だ。ひき肉は照射によって赤色が退色することが分かっており、レバーでも色の変化が心配されたが、肉眼で明らかな色の変化はなかった。一方、においは調査にあたった10人全員が照射前のものと違いを感じた。

 この結果について、厚労省は「放射線照射によってレバー内部が殺菌できるという有効性は確認できた」。しかし、「実際の流通に即した安全性の確認が不十分。照射によってできる物質の安全性を評価する必要もある」として、引き続き殺菌法を検討している。

 食品照射に詳しい日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門研究主席、小林泰彦さんは「放射線照射は世界中で利用されている食品の安全を守るための技術。これまでの研究で、照射でレバー内部を十分殺菌できることが証明されている。豚など禁止されていないレバーが生食されている現状を考えれば、一日も早く、照射で安全を確保したレバーを提供できるようにすべきではないか」と話している。

 ■宇宙食や防災食にも利用

 日本では、食品への放射線照射はジャガイモの芽止め防止目的だけに認められている。海外では香辛料や肉・魚介類、野菜、果物、また、宇宙食や防災食にも照射が利用されている。

 世界では約130の照射施設があるが、ここ数年、インドやベトナムなどアジア諸国では照射施設の建設ラッシュが起きている。植物検疫処理で照射が必要なためで、照射したマンゴーやパパイアなどの果物は米国やEU(欧州連合)に輸出されている。

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