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丸山ワクチン、有償治験から30年超 アジア各国でも臨床試験へ

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丸山ワクチン、有償治験から30年超 アジア各国でも臨床試験へ

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有償治験薬の丸山ワクチン。A液とB液を1日おきに交互に皮下注射するのが基本的な使用法だ  がんの治療薬としての認可をめぐり、国会で審議されるなど社会的に大きな問題となった「丸山ワクチン」。昭和56年に患者が実費を負担する「有償治験薬」としての使用が認められた。しかし、既に30年以上が経過しており、丸山ワクチンを知らない人も多い。治療の受け方や最近の研究成果を紹介する。

 白血球減少抑える

 丸山ワクチンは、がんの免疫療法の一つで、がん細胞を直接殺すのでなく、免疫の働きを強化し、がんを抑制する薬。がん治療は、手術、放射線、抗がん剤の3つが基本だが、免疫療法はこれらに次ぐ「第4の治療法」として期待され、丸山ワクチンはその元祖ともいえる。

 通常の「治験」は治療ではなく、有効性や安全性の調査・研究が目的。しかし、丸山ワクチンの「有償治験」は希望する患者に提供することを目的として設けられた制度ともいえる。このため、有償治験を希望した患者に対して、通常の治験のように有効成分が入っていないプラセボ(偽薬)が投与されることはない。

 丸山ワクチンは無色透明の注射液剤で、通常は濃度の違うA液(2マイクログラム)とB液(0・2マイクログラム)を交互に皮下注射する。費用は1クール(隔日使用で40日分)9千円(消費税別、注射料金などは別)。A液の10倍の濃度の「アンサー20」は放射線治療時に起こる白血球減少を抑える薬として認可されており、医療現場で使われている。

 本当に効く?

 有償治験となってから30年以上が過ぎており、これまでの使用者は約40万人。効果については、あるともないともいえないのが現状だ。国際的な医薬品審査の基準にのっとり、がんに効くかどうかを証明するための臨床試験が始まったのは平成16年で、今も続いている。対象は放射線治療を行っているIII期の子宮頸(けい)がん患者で、丸山ワクチンB液とプラセボを併用したときの5年生存率で比較している。

 濃度の薄いB液を臨床試験に使うことにしたのは、本格的な試験を始める前に行った事前研究で、濃度の異なる4種類で5年生存率を比較したところ、B液が最も良い結果だったためだ。埼玉医大国際医療センターの藤原恵一教授(婦人科腫瘍科)が昨年、これまでに臨床試験に参加した約250人の結果をASCO(米国臨床腫瘍学会)で報告した。しかし、症例数が少なく、統計学的にはB液とプラセボで有意差がないという結果だった。

 日本だけでは臨床試験に参加する患者がなかなか集まらないこともあり、丸山ワクチンを生産する製薬会社「ゼリア新薬工業」は2014年度中にも中国や韓国などアジア各国で臨床試験を始める予定だ。

 NPO法人「丸山ワクチンとがんを考える会」の丸山茂雄副理事長は「丸山ワクチンはがん治療の選択肢の一つ。他の治療との併用も認められている。『患者・家族の会』((電)03・3823・4620、月火木の午前9時~午後1時)もあるので、詳しく知りたい人は相談してみてほしい」と話している。(平沢裕子)

 ■使用には医師の承諾が必要

 丸山ワクチンは昭和19年、皮膚科医で日本医大元学長の丸山千里氏が皮膚結核の薬として開発、30年代からがんの治療に転用する研究が行われた。51年、がんの治療薬としての製造承認を求める申請が厚生省(当時)に出されたが、「がんに対する効果は認められない」と56年に却下。ただ、有償治験薬としての使用は認められており、投与を希望する患者には日本医大付属病院ワクチン療法研究施設で頒布されている。

 治療を受けるには、丸山ワクチンによる治験を医師に引き受けてもらう必要がある。担当医師が決まったら治験承諾書などを用意し、同施設に提出。説明を受け、同意(インフォームド・コンセント)すれば使用が可能となる。

 1回目はワクチンを受け取るのに本人か家族が来院する必要があるが、2回目以降は郵送で受け取ることもできる。

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