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慢性腎臓病 年末年始のごちそうに多い塩分やリン取り過ぎに注意

ニュースカテゴリ:暮らしの健康

慢性腎臓病 年末年始のごちそうに多い塩分やリン取り過ぎに注意

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右が普通の懐石弁当、左がCKD患者用にアレンジした懐石弁当。さつま揚げやエビ天を果実に、梅干しをゴマなどにすることで、食塩8グラム→4グラム、タンパク質45グラム→28グラム、カリウム1200ミリグラム→1100ミリグラム、リン630ミリグラム→460ミリグラムと栄養素をそれぞれ減らしている  腎臓の機能が慢性的に低下し続けることで、腎不全や脳卒中などの心血管疾患となるリスクが高い慢性腎臓病(CKD)。日本では成人の8人に1人とされ、食事のコントロールが欠かせない疾患だ。特に年末年始は塩分やカリウム、リンを多く含むごちそうを食べる機会が多いだけに注意が必要だ。(平沢裕子)

 塩分1日6グラム未満

 CKDの患者が最も不安に思うのは、腎機能の悪化で透析をしなければならなくなること。透析導入を遅らせるには薬物治療だけでなく、食事の栄養管理が欠かせない。日本腎臓学会の「CKD診療ガイド」では、塩分1日6グラム未満を目標にしているほか、タンパク質やカリウムの取り過ぎやリンの多い食事を避けるよう呼び掛けている。

 ただ、バイエル薬品(大阪市北区)が患者(CKDステージ4か5)173人を対象に行った意識調査では、透析導入を遅らせるため、塩分制限には73%が取り組んでいたが、タンパク質制限は45%、カリウム制限は36%と、塩分以外では実施率が低かった。

 川崎医科大付属病院栄養部の市川和子部長は「タンパク質の過剰摂取は腎臓の糸球体に負荷をかけ、取り過ぎの状態が長期間続くと腎臓の機能が低下する。また、カリウム摂取が多いと高カリウム血症のリスクが高まる。腎臓にダメージを与えないためには塩分だけでなく、他の栄養素も普段の食事でコントロールすることが大事」と指摘する。

 低栄養のリスク

 また、体内にリンがたまる「高リン血症」は生命予後が悪く、心血管疾患のリスクが高いほか、腎機能悪化の進行速度を速めることが報告されている。このため、腎臓専門医の間でリンの管理をどうするかは大きな課題となっている。ただ、同調査でリンが多く含まれる食材について聞いたところ、約3割が「知らない」と回答、高リン血症についても約半数が知らなかった。

 東京大学医学部付属病院腎疾患総合医療学講座の花房規男特任准教授は「専門医以外は高リン血症への関心が高くないのが現状で、患者にもリン制限について伝わっていないようだ。生命予後の改善と末期腎不全への進行を予防するため、食事からのリン負荷を減らすようにしてほしい」。

 リンはタンパク質を多く含む食物に多いため、これまで「タンパク質制限=リン制限」と考えられてきた。しかし、タンパク質は必要以上に制限すると低栄養となるリスクがある。必要なタンパク質量を確保しながらリンを減らすには、リンを多く含むタンパク質食品を避けるなどの工夫もいる。リン含有量の多い食品は、チーズ▽牛乳▽ししゃも▽ナッツ・豆類▽ファストフード▽インスタント食品▽スナック菓子▽ハム▽魚肉ソーセージ▽かまぼこ-など。

 市川部長は「お節につきもののかまぼこ、だて巻き、ハムなどはリンが多いので要注意。ただ、ごちそうが全てだめというわけではなく、治療用特殊食品やリン吸着薬などを利用するのもいい。何をどう制限すればいいか分からない人は管理栄養士に相談してみてほしい」とアドバイスしている。

【用語解説】CKD

 慢性腎臓病。腎臓の濾過(ろか)機能が低下、または尿たんぱくなど腎臓の障害がある状態のいずれかが3カ月以上続く症状。糖尿病や高血圧などの原因が多い。GFR(糸球体濾過量)の数値によって5段階に分類。数字が大きくなるほど重症度が高く、ステージ5は腎不全で透析一歩手前の状態。

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