ニュースカテゴリ:暮らし
書評
【書評】『岩波茂雄と出版文化 近代日本の教養主義』村上一郎著・竹内洋解説
更新
村上一郎著・竹内洋解説『岩波茂雄と出版文化』(講談社学術文庫) 三島由紀夫や吉本隆明にも一目置かれた鬼才評論家、村上一郎(1920~75年)による、岩波書店創業者の辛口評伝の復刊だ。
戦前の知的状況を評してよく言われる「岩波文化」と「講談社文化」。インテリと大衆の二項対立図式だが、泥臭い刻苦勉励主義という点で通底すると喝破するのは本書の白眉。その他、産業としての「岩波文化」の構造や、誠実さの裏の打算を論じて容赦がない。
本体に迫る分量の解説を寄せるのは、教養主義論の第一人者である竹内洋・京大名誉教授。切れ味鋭いがやや乱暴な村上の議論を補い、読みどころを摘出して見事。(講談社学術文庫・756円)