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【書評倶楽部】女優・東ちづる 同性結婚から見る家族・愛

ニュースカテゴリ:暮らしの書評

【書評倶楽部】女優・東ちづる 同性結婚から見る家族・愛

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東ちづるさん  『ふたりのママから、きみたちへ』東小雪、増原裕子著

 オランダで女性同士、男性同士の結婚式に参列したことがある。とても感動的で愛あふれるセレモニーだった。同性であれ異性であれ、愛し愛されることはシンプルで自然なことだとしみじみ感じた。

 だけど日本の法律では同性の組み合わせの結婚は想定されていない。うーむ。LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)関連の本だってたくさんある時代なのに。『きのう何食べた?』よしながふみ著(講談社)、『ゲイのぼくから伝えたい「好き」の?(ハテナ)がわかる本』石川大我著(太郎次郎社エディタス)、『ダブルハッピネス』杉山文野著(講談社文庫)などなど。

 そして待ってました、レズビアンの本。2冊同時発売。

 TDR(東京ディズニーリゾート)史上初の同性結婚式をあげ、かなり話題になった2人が子供を迎える準備を始めた。でもきっといつか子供から「うちはどうしてママが2人なの?」「私(僕)はどうやって生まれたの?」と聞かれる日がやってくる。だから2人でたくさん話して、たくさん模索してこの本を書いた。

 なんとなく皆と同じじゃなきゃダメという圧力のようなものがあるこの社会では、見た目分かりにくいマイノリティーの人が正直に、自然体に、自分らしく生きようとするとさまざまな壁に突き当たる。なので彼らは、人生の早い段階から自分を深く見つめることができ、社会の未熟な部分にも気づけるポテンシャルの持ち主なのだ。

 マイノリティーという側面からと、元被虐待児という側面からとも向き合っているこの本は、セクシュアリティーに関する問題を越えて、「家族とは?」「愛するとは?」「命を育むとは?」という普遍的で大切な問いへとつながる。

 まずコミックエッセー『レズビアン的結婚生活』(イースト・プレス)を読んでからこの本へと読み進めることをおすすめしたい。両本とも静かなる問題作だ。(イースト・プレス・1365円)

【プロフィル】東ちづる

 あずま・ちづる 情報番組「ワイド!スクランブル」に出演中。一昨年、まぜこぜの社会を目指す一般社団法人「Get in touch」設立。

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