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書評
【書評】『小説のタクティクス』佐藤亜紀著
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『小説のタクティクス』佐藤亜紀著(筑摩書房・1995円) 評論『小説のストラテジー』で知られる作家が、小説において形式が果たす役割を探った刺激的な創作論。小説の目的とは〈記述の動きによって読み手の応答を引き出すこと〉だと著者は言う。起伏に富んだストーリーにせよ、破天荒なキャラクター造形にせよ、それらは言語によって記述され、組織化された刺激となり、読み手に届けられる。そこで戦術(タクティクス)としての形式が問われることになる。
絵画や映画に描かれた人間の「顔」についての考察から、小説の現在地を導き出す筆の運びはスリリング。3・11以後の表現の可能性も論じる。(筑摩書房・1995円)