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高齢者の悪質商法被害 「自分は大丈夫」の考え捨てて
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出前講座で還付金詐欺について説明する真鍋重朗さん。被害防止には高齢者だけでなく、周りの見守り者への啓発も欠かせないという(真鍋さん提供) 高齢者がターゲットとなることが多い振り込め詐欺などの悪質商法。「未然に防ぐには高齢者やその家族らに被害事例を知ってもらうことが大事」と、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会東日本支部の消費者教育研究会は8年前から出前講座を行っている。巧妙な手口に乗せられないための秘訣(ひけつ)は-。(平沢裕子)
「今は小学校低学年から90代のお年寄りまで、あらゆる年代の人が悪質商法の被害に遭う時代。交通事故に遭う確率より悪質商法の被害に遭う方が高いんですよ。まず、『自分だけは大丈夫』という考えは捨てましょう」
出前講座で講師を務める同会会員で消費生活アドバイザー、真鍋重朗さん(52)が講座冒頭、必ず話す内容だ。平成16年に同会を立ち上げ、8年間会長を務めてきた真鍋さん。高齢者が被害に遭いやすいのは、高齢者の多くが「人の役に立ちたい」「自分を認めてほしい」と思っており、この気持ちを犯人が巧みに利用しているためと分析する。
オレオレ詐欺など子供や孫を装った犯人からの電話に「子供や孫の声ぐらい分かる」という高齢者がだまされるのは、何らかのトラブルに巻き込まれ、困った状況に置かれているように思える子供や孫を「なんとか助けてあげたい」という気持ちが働くためという。
高齢者のこうした気質に加え、昔に比べ、家族や地域の結びつきが弱くなっていることも被害が減らない一因となっている。
「独居でも離れた家族と連絡を密に取っていれば、途中で『おかしい』と気づく可能性が高い。被害を防ぐには、高齢者に気をつけてもらうだけでは難しく、家族や知人、ヘルパーさんなど周りのサポートも必要」(真鍋さん)
出前講座を始めた頃は銀行・郵便局の口座への振り込みを要求する「振り込め型」が多かった。近年は犯人やその代理人に直接現金を渡す「手渡し型」が増えている。警察庁によると、昨年のオレオレ詐欺の8割が手渡し型だった。
「悪い人なら直接会ったりしない」「わざわざ会いに来るのは本当に困っているからだろう」と思う高齢者の心理を巧みについた手渡し型。銀行振り込みのような上限金額がないことから、1度に200万~300万円など多額の金額をだまし取られることも少なくない。被害者の多くが、「すぐにお金が必要」との言葉を真に受け、誰にも相談することなくお金を渡す。犯人は、高齢者が多額の金額を銀行で引き出す際に「振り込め詐欺の被害に遭っているのではないですか?」と声を掛けられるのを見越し、「リフォームに必要なお金と説明するといいですよ」などのアドバイスまでするという。
未公開株詐欺や還付金詐欺など、よくあるもうけ話にだまされてしまう高齢者も多い。こうしたもうけ話は電話や訪問販売での勧誘がほとんどだ。この際も「自分の話をじっくり聞いてくれた」「親切にしてくれた」など高齢者の心に入り込み、お金を引き出させるケースが目立つ。
いずれの被害者も「すきがあった」「欲張ったからだ」と自分を責めるが、被害者に落ち度があるわけではない。出前講座では被害事例を寸劇で紹介。犯人の巧妙な手口と消費者側の弱点を示し、未然に防ぐにはどうすればいいかを一緒に考える。
真鍋さんは「高齢者に知ってほしいのは、昔に比べて人をだまそうとする悪い輩が増えており、誰もが被害に遭う可能性があること。どんな理由であれ、『多額のお金が必要』と言われたときは、たとえ『急いでいる』と言われても、お金を渡す前に家族や親しい知人などと連絡を取り、客観的な判断を仰ぐようにしてほしい」とアドバイスしている。
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警察庁によると、平成25年の振り込め詐欺など特殊詐欺の被害額は過去最悪の約489億円に上る。被害者の約9割が60歳以上で、6割が女性。同庁が被害者に実施したアンケートでは、約9割が「自分はだまされない」ということに「自信があった」と回答している。
同庁は「『代わりの者にお金を渡して』『携帯電話の番号が変わった』などの電話は詐欺」と指摘。こうした電話がかかってきたときが犯人を捕まえる絶好のチャンスのため、電話がかかってきたらあわてず、だまされたふりを続け、電話を切った後、110番通報する「だまされた作戦」への協力を呼び掛けている。