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「父子手帳」配布する自治体増加 夫婦の役割や育児を“学習”
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男性の視点に立った和歌山市の『父子手帳~和歌山男の子育て指南本』(同市提供) 妻の妊娠・出産と、子育てを考えるきっかけにしてほしいと、母子健康手帳とセットで父子手帳を交付する自治体が増えている。父親グループの協力を得て作成されただけあって、父子手帳には父親向けの子育てのヒントが多い。父子手帳による「父親教育」で、夫婦間の意識のずれや子供への虐待を防止する狙いもある。(村島有紀)
平成23年度の厚生労働省の全国母子世帯等調査結果報告によると、母子家庭になった理由として、離婚が9割を占める。離婚時の子供の年齢は0~2歳が35・1%で最多。3~5歳(20・9%)、6~8歳(11・5%)と、年齢が上がるにつれて減少することから、出産を機に夫婦関係が悪化し、離婚するケースが多いとみられる。
和歌山市は2年前から、『父子手帳~和歌山 男の子育て指南本』を母子健康手帳とセットで配布。市内の父親グループらの協力を得て作った。同市子育て支援課の担当者は「女性は体の変化などから少しずつ母親になる自覚を持つが、男性の場合、子供が『パパ』と呼ぶようになるまで父親としての自覚が生まれない人もいる」。
父子手帳は、子供や育児に関心のない男性も手に取りやすくするため、雑誌のように写真を大きく使っている。博物学者の南方熊楠(自由人)や商人の紀伊国屋文左衛門(社交的)ら和歌山ゆかりの人物をタイプで分類し、チャート式で自分の「パパタイプ」を見分けられるページや、「和歌旦那七カ条」という父親の心得などユーモアたっぷりな内容を記載。「男の自習時間」と題したコラムでは、妊娠中の女性の体の変化や0歳児の発育、第1次反抗期とされる「イヤイヤ期」の知識などを紹介している。
担当者は「1人で家事や育児ができる『イクメン育成』のための父子手帳もあるが、ハードルが高い。まずは奥さんの妊娠を機に子育てを考えるきっかけにしてほしい」。
社会問題となっている児童虐待。虐待がエスカレートする要因の一つに育児ストレスや産後鬱、地域からの孤立などがある。父子手帳には、女性の体調の変化や産後に期待される父親の役割などを伝えることで、父親の育児参加の自覚を促す狙いもある。
さいたま市は以前から父子手帳を配布していたが、3月から新たに地元のNPO法人や父親グループが協力し、父親目線の『父子手帖~さいたま市で父になる。』を発行した。
子供の誕生の瞬間や寝返りをしたとき、初めて立ったときの気持ちを書き込む記録のページが多い。住民からの子育て応援メッセージや子供との散歩の魅力なども掲載されている。
担当の小沢千佳子さん(52)は「都心に仕事があり、さいたま市には夜遅く帰るというお父さんも多い。しかし、母親だけの子育ては負担が大きく、父母だけでも無理。子育てにはもっと多くの人の関わりが必要。子育てを通じて地元を知り、好きになってほしい」。
作成に協力した父親グループ「さいパパ」代表の紅谷弘二さん(45)は「一昔前は企業戦士と呼ばれ、現役時代は子育てに関わらない男性が多かった。しかし、小さな子供と関わることができるのは人生の中のわずかな時間。『父子手帖』をきっかけに、人生で何を大切にするのかを考える機会にしてほしい」と話している。
子育て支援サービスの一環として自治体が配布する父親向け育児副読本。名称は自治体によって異なり、内容も自由に決められる。平成6年から『父子健康手帳』を行政向けに販売している東京法規出版によると、納入先は約200自治体に上り、最近10年ほどで増えたという。埼玉県の『イクメンの素』▽岐阜県の『パパスイッチオン!』▽宮崎県の『パパのイクメン手帳』▽鳥取県の『がんばるイクメンのリアルな日常』-など都道府県が発行する冊子もある。
妊産婦の健康、誕生から就学までの子供の健康を守るため、母子保健法で全国の区市町村に配布が義務付けられている。妊娠や出産、予防接種などの記録部分は全国的に共通。