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社会
「仮想通貨」強盗にお手上げ ビットコイン1億円超被害 犯罪の温床
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インターネット上だけで流通する仮想通貨「ビットコイン」が世界中で急速に普及し、注目を集める中、先月(10月)下旬、「取引所」で4100ビットコイン(現在の取引レートで約1億3300万円相当)がハッカーによって盗まれる事件が起きていたことが分かった。記録を残さず自由に迅速に送金でき、手数料も安いことから通信販売などの決済に利用が広がっているビットコインだが、安全上の問題が新たに浮上した形で、対策を講じないと今後、仮想空間の中でも「銀行強盗」が頻発しかねないと関係者は警鐘を鳴らしている。
ビットコインの盗難被害にあったのは、「取引所」を運営するオーストラリア在住の少年(年齢は18歳以下)で、11月8日、米ABCニュースに“告発”した。10月26日に顧客から送金を依頼され、ネット上で操作していたところ、複数の口座から合わせて4100ビットコインが強奪されていることに気づいたという。少年はハッカーに侵入されたとしているが、「(カネが)戻ってくる可能性はほとんどないので、警察は届けない」と話した。
ビットコインは、「ナカモト・サトシ」と名乗る正体不明の人物が2008年、電子通貨の通信規約とプログラムを公表したのがきっかけで、翌年2月から利用が始まった。利用者はドルや円でビットコインを購入して、世界各地の民間業者によるネット上の取引所に口座を開設。実際の商取引の際には、取引所を通して相手にビットコインを送金する仕組み。
一般的な電子マネーには中央銀行に当たる事業主体が存在するが、ビットコインの場合は事業主体が明確ではなく、単位当たりの価値は需給に応じ変動している。また、取引所でドルやユーロ、円などと交換もできるため、現金との互換性が着目され投機対象にもなっている。
現在、「ビットコイン経済圏」(流通量)は約39億ドル(約3900億円)と推計されているが、その規模も価値も今年になってうなぎ上りの状態が続いている。年初には1ビットコインは20ドル程度だったが、4月になって急騰し、250ドルを突破。その後、一時下がって小康状態が続いたが、9月に入って再び上昇に転じ、現在は320ドル程度で取引されている。
急騰した理由の一つは、多額のアングラマネーを抱えた中国の富裕層(特権階級)が大挙、資金洗浄目的でビットコイン市場に参入したためとみられている。迅速、廉価に加えて、ビットコインの一大特徴は情報の秘匿性にあり、金融機関を通さないで決済するので資金の流れが分からない。さらに、プログラムが暗号化されているので、通常は所有者やその保有額を特定することもできない。
先月(10月)には、違法薬物のサイバー闇市場として悪名をはせてきた「シルクロード」が米連邦捜査局(FBI)の摘発を受けて閉鎖されたが、決済にはビットコインが使われていた。
ビットコインの盗難はこれまでも何回か起きていたとみられるが、4100ビットコインの高額は前例がない。事情に詳しい識者は匿名でABCに「大きな警鐘だ。もともと、犯罪を引きつけやすい性質を持っているだけに、価値の向上とともに『銀行強盗』の多発が懸念される」と述べた。
米国をはじめ各国の金融当局はビットコインを扱う取引所に登録を義務付け、送金する人物を特定するよう求めるなど規制に乗り出したが、「規制強化で低コストと迅速性という仮想通貨の魅力が失われる」(米エコノミスト)との声も上がっている。(SANKEI EXPRESS)