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予想超す被害 日本代表として貢献 自衛隊輸送機、タクロバンに救援物資搬送

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予想超す被害 日本代表として貢献 自衛隊輸送機、タクロバンに救援物資搬送

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 フィリピンの台風被災地で救援活動を行っている航空自衛隊のC130輸送機2機は11月20日、被害が深刻な中部レイテ島タクロバンへ救援物資の空輸を開始した。自衛隊の輸送機がタクロバンに入るのは初めて。救援物資を空輸した後の復路では被災者の輸送を行い、C130に乗り込んだ被災者たちは機内で安堵(あんど)の表情を浮かべていた。

 被災者安堵

 2機は、自衛隊の国際緊急援助隊として愛知県小牧市の小牧基地から派遣され、首都マニラを拠点に活動している。すでに(11月)18日から、中部パナイ島ロハスへの物資輸送を始めたが、フィリピン政府の要請を受け、タクロバンへも支援の手を伸ばした。

 記者が乗った自衛隊機は、セブ島を経由し、フィリピン政府のトラックや給水器、米国のボランティアらをタクロバンに空輸した。浅沼克典機長(42)は、タクロバンの飛行場について「予想以上に被害が激しい」と指摘。各国のヘリコプターや輸送機が慌ただしく離着陸する中、「日本の代表として、被災者の役に立ちたい」と決意を述べた。

 飛行場では、避難希望者が長い行列を作っていた。自衛隊機に搭乗することになった男性(22)は、妻と2人の子供を連れマニラに。「台風で財産を失い、航空チケットを買うカネがない。2日待ったが、何とか乗れてよかった」と疲れた表情で語った。

 記者とともに自衛隊機に乗り込んだ被災者約30人は一様にほっとした様子。子供を抱いたまま仲間と握手をして喜ぶ男性もいた。長い避難生活からか、離陸後はすぐに眠りに落ちる被災者が多かった。

 もう1機の自衛隊機も、航空燃料のドラム缶48本をタクロバンに空輸した復路、約40人の被災者をマニラに運んだという。

 タクロバンでは、米国や韓国、マレーシア、スウェーデンなど各国空軍機が空輸や支援物資の搬入をすでに行っている。

 フィリピン空軍担当者によれば、マニラやセブ島へ向かう支援機には無料で乗れるため、毎日約2000人が列を作り、1日10~15便程度が被災者を島外に運んでいるという。

 民間航空3社も先週後半からマニラやセブ島とを結ぶ便の再開を本格化させており、20日は計8便が島民を運んだ。

 死者4000人超に

 フィリピンの国家災害対策本部によると、11月20日午前現在、台風30号による死者は4011人と4000人を超えた。行方不明者は1602人。まだ収容されていない遺体が多く、今後も犠牲者は増える見通しだ。

 被害が甚大だった中部レイテ島やサマール島では、水や食料を救援物資に頼っているが、孤立した集落への支援は行き届いていない。発電所も被災し、停電が続いている上、ガソリンなど燃料の供給も滞っている。(タクロバン 吉村英輝、岩田智雄/SANKEI EXPRESS

 ≪中国 海軍医療船を派遣≫

 中国外務省の洪磊(こう・らい)報道官は11月20日、台風30号で甚大な被害を受けたフィリピンに、中国海軍の医療船「平和の箱舟」号や緊急救援隊を派遣することを明らかにした。中国赤十字に所属する緊急救援隊の第1陣は20日中に被災地に向けて出発する予定。

 中国政府は災害発生後、10万ドル(約1000万円)の支援を表明したが、その額について欧米メディアを中心に批判の声が上がり、約160万ドル(約1億6000万円)の物資支援を追加した。中国とフィリピンは南シナ海の領有権で対立しており、両国関係の冷却化が、消極支援の背景にあるとの臆測が流れていた。

 米国が原子力空母を派遣、日本も自衛隊の国際緊急援助隊などを投入する中、海軍医療船を被災地に送ることで中国の存在感を示し、東南アジアにおけるイメージ低下を防ぐ狙いがあるとみられる。(北京 川越一/SANKEI EXPRESS

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