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科学
海面上昇年12ミリ 「悲劇」増幅 フィリピン台風、世界気象機関が報告
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台風30号の直撃でフィリピンが受けた高潮による甚大な被害は、地球温暖化が原因の海面上昇によって増幅されたことが、世界気象機関(WMO)の報告で明らかになった。報告によると、今年の世界の海面上昇速度は平均で年3.2ミリと過去最高を記録し、なかでもフィリピンはその約4倍の年12ミリにも達した。島嶼(とうしょ)国や沿岸地域では海面上昇による高潮被害の拡大リスクが指摘されてきたが、WMOは「フィリピンの悲劇がそれを証明した」とし、気候変動への世界的な取り組みの必要性を訴えている。
「フィリピンは観測史上最大級の台風の被害による惨状にあえいでいる」
WMOのミシェル・ジャロー事務局長は11月13日、ポーランドのワルシャワで開かれている気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)で報告を発表し、その中でフィリピンについて言及した。
WMOは1993年から人工衛星を使って世界の海面上昇を測定してきた。2001年以降の上昇率は年3ミリ以内で推移してきたが、今年3月の測定で初めて年3ミリを超えた。太平洋の赤道付近は特に上昇が激しく、フィリピンでは世界平均の4倍近くに達したとしている。
報告は、海面上昇のメカニズムについて、「かつてない濃度にまで高まった二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスによって大気が温められ、その大気が海洋に吸収されて、海洋の温度が上昇し、海氷が解け続けている」と説明した。
ジャロー氏は「われわれの未来はさらに温暖化し、何百年にもわたって海洋の温度は上昇を続けるだろう」と警告。「沿岸地域の住民はすでに高潮の被害を受けやすくなっている」とし、今回の被害によって、地球がかつてないほど異常気象に脆弱になっていることが証明されたとの認識を示した。
フィリピンでは、強力な低気圧である台風の上昇気流で吸い上げられた海面が、強風にあおられて津波のような高潮となって押し寄せ、甚大な被害をもたらした。
さらに、海洋の温度上昇などの気候変動が、今回の30号のような“モンスター台風”を発生させたとの指摘もある。ジャロー氏は「個々の熱帯低気圧の発生は、気候変動が直接の原因とは言えないかもしれない」としながらも、「発生頻度(ひんど)と気候変動との因果関係について研究が進めば、相互影響の強さが明らかになるだろう」と語った。
報告が発表されたCOP19では、(11月)11日の開幕日にフィリピンのナデレフ・サニョ代表が「わが国で起きた異常気象による狂気の再発を防ぐ有意義な結果を出さなければならない」と涙ながらに語り、交渉が進展するまでの断食を宣言した。会場では、サニョ氏に共鳴した環境保護団体のメンバーら約50人が断食を始め、世界各地でも連帯する動きが広がっているという。
台風上陸から15日で1週間。サニョ氏が家族とともに暮らしていた被害が最も大きいレイテ島タクロバンでは食料や水が不足し治安も悪化している。
「われわれは問題を解決し、狂気を止めることができる」。サニョ氏は、先進国と途上国が一致して温暖化対策に取り組むことを切望している。(SANKEI EXPRESS)