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【伊豆大島】笑顔で出迎え 不明者捜索も再開 島外から避難者戻る

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【伊豆大島】笑顔で出迎え 不明者捜索も再開 島外から避難者戻る

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 台風26号による土石流で甚大な被害が出た伊豆大島(東京都大島町)では10月27日、台風27号の接近に伴う避難指示と勧告の解除から一夜明け、自主的に島外避難していた住民らが続々と戻った。中断していた行方不明者の捜索も2日ぶりに再開され、警察や消防、自衛隊が約2000人態勢で発見に全力を挙げた。

 「ほっとしたら泣いちゃった」

 島北部の岡田港では、住民を乗せた高速船が到着し、家族らが笑顔で出迎えた。1週間ほど前から避難していた元町五輪の鈴木稚加子さん(38)は娘2人と夕方の便で島に。迎えに来た夫の勇一さん(45)は「久しぶりに家族だんらんだね」と、長女めるもちゃん(8)と次女うるみちゃん(3)を抱きしめた。

 元町地区に住むレンタカー会社経営、平川幸子(ゆきこ)さん(42)は「お帰り。もう大丈夫だよ」と言って、船から降りてきた長女の中学3年、乃々子(ののこ)さん(14)と小学4年の長男、楓真(ふうま)くん(10)を両手で抱き寄せた。姉弟は(10月)24日に2人きりで島外へ避難。母と再会して思わず涙があふれた乃々子さんは「お母さんが元気そうでよかった。ほっとしたら泣いちゃった」。楓真くんは漫画を片手に「寂しかった。家に帰って寝たい」と、疲れた表情で話した。

 都立大島海洋国際高校は島外出身で寄宿生活をしている生徒166人を(10月)22日から一時帰省させていたが、27日午前にほぼ全員が戻った。3年生の渡辺誠さん(17)は「島の状況が分からず不安だった。今後はボランティアで島の人たちの力になりたい」と意気込んだ。大島海洋国際高校はこの日から早速、授業を再開した。

 台風接近を前に、都が用意した施設に移った自力避難が困難な高齢者らは28日から29日、島に戻る。

 「一刻も早く家族の元へ」

 一方、中断していた行方不明者の捜索は27日朝から再開。自衛隊は、町の花であるツバキと島の形の絵をあしらった「Operation TSUBAKI RESCUE」と書かれたバッジを着け、活動に従事した。

 元町地区の沢沿いでは、福島県を拠点とする陸上自衛隊第44普通科連隊重迫撃砲(じゅうはくげきほう)中隊が、流木を撤去しながら不明者を探した。

 中隊長の中嶋豊3等陸佐(39)は東日本大震災の際、宮城や福島の現場でも活動した経験を持つ。「大島の被害は大震災の津波被災地を思いださせる。(中断による)遅れを挽回(ばんかい)し、一刻も早く家族の元へ返したい」。中嶋3佐は、隊員とともに捜索を続けた。

 警視庁によると、台風26号による被害で、27日に新たに3人の身元が判明した。これまでに32人の死亡が確認され、行方不明は9人となった。

 ≪安倍首相が視察、首長とのホットライン整備≫

 安倍晋三首相(59)は10月27日午後、伊豆大島(大島町)を訪れ、特別警報が発表されにくい島嶼(とうしょ)部で記録的な大雨が予想される場合の連絡態勢構築に関し「(国と)首長との間でホットラインを通じて危機意識を共有するなど、運用の改善を図る」と記者団に表明した。伊豆大島の激甚災害指定を急ぐ方針も明言。台風被害を踏まえ、市町村が避難勧告や指示を出す目安をまとめたガイドラインを見直す考えも示した。台風26号への対応をめぐっては、気象庁が特別警報を出さなかったことや、大島町が避難勧告や指示を出さなかったことに批判が出ていた。

 首相は島嶼部の特別警報発表について「さらに精度を上げる必要があると考えている」と説明。当面の対応として、ホットラインに言及した。首相は陸上自衛隊のヘリコプターに搭乗し、土石流の現場などを上空から確認した。川島理史(まさふみ)町長(61)らから被災状況の説明を受け、町役場に避難している住民に「一日も早く元の生活に戻れるよう力を入れていく。体に気を付けてください」と激励した。(SANKEI EXPRESS

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