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【伊豆大島】「肩寄せ合った長い一日」 島民安堵

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【伊豆大島】「肩寄せ合った長い一日」 島民安堵

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 ≪避難指示・勧告を解除≫

 台風26号による土石流災害が起きた伊豆大島の東京都大島町は10月26日午後、台風27号の接近に伴い島内全域に出した避難勧告と、土砂災害の危険性が高い3地区への避難指示をすべて解除した。国土交通省などの調査結果を受け、新たな災害の恐れはないと判断した。

 25日から中断していた警視庁や東京消防庁、自衛隊などによる行方不明者12人の捜索は、27日から再開する見通し。これまでに31人の死亡が確認され、うち28人の身元が判明している。

 町によると、25日から断続的に降った雨による新たな災害は確認されていない。町では雨の峠を越え、気象庁は26日午後、大雨警報を注意報に切り替えた。町では25日からの総雨量が140ミリ以上に達した。

 町は25日午後、島内全域に避難勧告を出し、3地区の約1270人については、より拘束力の強い避難指示に切り替えていた。

 台風27号は26日午後3時、日本の東海上で温帯低気圧に変わった。27号の影響で、京都府福知山市で橋が流失。静岡県磐田市では住宅などが浸水した。千葉県成田市では自宅屋根を修理していた男性(56)が足を滑らせ転落。胸の骨を折る重傷を負った。

 ≪「肩寄せ合った長い一日」 島民安堵≫

 「長い一日だった」。一夜を避難所で過ごした子供やお年寄りは疲れや安堵(あんど)の表情を浮かべ、家路についた。台風27号が遠ざかった10月26日午後、すべての避難指示・勧告が解除された伊豆大島(東京都大島町)。避難した約1300人全員が帰宅する中、川島理史(まさふみ)町長は「今後の情報に注意し、落ち着いた行動を」と呼びかけた。今回早めの指示・勧告を出した川島町長。避難者からは賛否それぞれの声が聞かれた。

 暗く静まり返っていた街に、次々と明かりがともり始めた。午後5時24分の避難指示解除を受け、元町地区には、続々と住民が車やマイクロバスで帰ってきた。

 「明日から仕事もできるし、生活を元に戻せる。みんなも安心している」

 解除後、真っ先に経営する商店を見に来た男性(64)は胸をなで下ろした。知り合いの高齢女性を車に乗せてきた自営業の男性(52)は「取りあえずは台風が過ぎ去って安心しているが、今後いつどうなるか分からない。雨が降るたびに避難することになるのか」と不安げに語った。

 町内で最多の避難者523人を受け入れた都立大島高校。元町地区の浅沼正さん(81)は「避難所内ではよくしてもらった」と振り返り、「(避難指示を)早めに出したのは二次被害を防ぐためにも正解だったと思う」と町の対応を評価した。

 泉津(せんづ)地区の旧泉津小学校で夫の新一郎さん(65)と過ごした鈴木よし恵さん(65)も「今回の避難指示は、町や住民にとっていい勉強になったと思う。この経験が今後生きてくるはず」と語った。

 「オオカミ少年」心配

 避難者の中には町の対応に疑問を持った人も。元町地区の無職、田中よし子さん(75)は「1人暮らしの人はこれから帰宅しても、食事の用意もできないのでは」と話し、「避難指示で被害がないことが続けば『オオカミ少年』のようになり、本当に危険な時でも逃げない人が出てしまうのでは」と心配した。

 解除を待ちきれずに早々と帰宅した人たちの姿も見られた。午後3時半ごろ、元町地区の原ハト子さん(77)は自宅に戻った。「長い一日だった」と大きなため息をつき、避難所での様子について「時間がたつのが長く感じ苦痛だった。関係機関と連絡を取れば、危険な場所などはもっと分かったのではないか」と振り返った。

 避難指示が出た25日夜、自宅で一夜を明かした元町地区の女性(74)は「雨粒も細かく、前回のように視界がきかないような雨ではなかったので、様子を見つつ、自分の責任で残った」という。

 「近いのがいい」

 町役場2階から大島高校に移った被災者は、午後3時33分の避難勧告解除後に役場に戻った。

 避難所では夜遅くまで台風情報を確認していたという。みな自宅を流されたり、家族を失うなどした経験を持つ。元町地区の沖山明美さん(64)は「みんなで頑張ろうと肩を寄せ合った」と語る。

 大島高校では他の避難者とは別のスペースが確保され、役場同様の不自由のない生活が送れたという。役場は被災した自宅からも近い。沖山さんは「気になれば、いつでも見に行ける距離。やはり近いのがいい」と安堵の表情を浮かべた。(SANKEI EXPRESS

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