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社会
【伊豆大島】「早くお父さんを帰して」 祈り続ける息子 土石流災害から2週間
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台風26号による土石流で甚大な被害が出た伊豆大島(東京都大島町)の元町地区にある小中学校2校が10月29日、授業を再開した。町立つばき小学校では心待ちにしていた児童が元気に登校。雨模様の中、教職員らが出迎え、11日ぶりに笑顔と歓声が戻った。災害発生からが30日で2週間がたつが、今も9人が行方不明のまま。つばき小学校1年の柳瀬海(かい)君(7)は、父の帰宅を待ち続けている。
(10月)19日から横浜市の親類宅に家族で避難していた1年生の永塚(ながつか)みみさん(6)は「鬼ごっこをして遊びたい」と友達との再会を喜んだ。母の摩衣子さん(37)は「家でも楽しみにしていた」と目を細めながら「万が一にでも、土砂崩れが起きないか心配です」とも。
つばき小は台風27号の接近で児童153人のうち、半数以上の80人が一時、島外に避難。この日は133人が登校した。
家族が犠牲になったり、家を失ったりした児童には、臨床心理士やスクールカウンセラーによる心のケアを行うという。
立木功校長(56)は全校集会で「お互いに助け合い、思いやり、励まし合って、元気な学校、地域をつくっていきましょう」と呼び掛けた。
「なかなか帰ってきてくれないから、毎日お祈りしてるんだ。早くお父さんを帰してくださいって」
今も行方が分からない柳瀬忍さん(37)の長男、海君も登校。「何をしたいとか、なかなか思いつかないけど、学校は久しぶり」と話した。
台風26号が迫る(10月)15日夕、忍さんは一人息子を父、政明さん(61)宅に送り届けた。海君がいつも楽しみにしている1泊2日のお泊まりのはずだった。
「明日迎えに来るからいい子にしてろよ」。そう言い残した忍さん。だが、自宅は土石流で跡形もなくなり、忍さんは海君の前から消えた。母親の光海(みつみ)さん(28)は大けがをして島外の病院に入った。
休日には学校の校庭でボール遊びをしてくれた。「お父さんのキック力はすごいんだよ。あの木の上まで飛ぶんだから」。海君は祖父宅の脇に立つ木を指さしながら誇らしげに話した。
「あんまりしつこくお願いしたから神様が意地悪して、お父さんを帰してくれないのかな。でもお願いするしかないもんね」
島には日常が少しずつ戻ろうとしているが、小さな胸に開いた穴は埋まらない。(SANKEI EXPRESS)