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中国尻目に「頼れる米国」アピール フィリピン台風被災地 米軍「支え合い作戦」大展開

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中国尻目に「頼れる米国」アピール フィリピン台風被災地 米軍「支え合い作戦」大展開

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 米国は台風30号で大きな被害を受けたフィリピンの被災地支援を通じ、アジアでの存在感発揮を狙っている。米軍は現地のタガログ語で「支え合い」を意味する「ダマヤン」作戦を展開し、原子力空母や新型輸送機MV22オスプレイなどを次々と投入。背景には海洋進出を続ける中国への意識がある。フィリピン支援への動きが鈍い中国との違いが際立っている。

 ヘーゲル米国防長官は11月15日、フィリピンのガズミン国防相と電話会談し、両国の緊密な連携が米軍の急派実現につながったとの認識で一致した。

 国防総省によると、横須賀基地(神奈川県)が母港の原子力空母ジョージ・ワシントンなどの艦船がレイテ島沖に到着し、食料や水などの物資を被災地にヘリコプターで投下するなどの支援活動を開始。佐世保基地(長崎県)に配備している揚陸艦ジャーマンタウンとアシュランドも増派して態勢を強化する。

 海兵隊は普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のオスプレイ計24機のうち、8機を被災地支援に充てた。地上で活動する隊員も近く300人から1200人規模に拡充する方針だ。

 オバマ大統領は10月、政府機関の一部閉鎖問題を理由にフィリピンなど東南アジア4カ国歴訪をキャンセルし、看板政策の「アジア重視」からの後退を印象付ける結果に。被災地支援は人道目的にとどまらず、アジアとの関係を深める思惑があるのは間違いない。

 東日本大震災で米軍が実施した支援活動「トモダチ作戦」は最大時に空母など艦船約15隻、航空機約140機を投入して物資輸送や行方不明者の捜索、仙台空港の復旧作業などに当たり、日米同盟の価値をアピールした。今回も軍の大規模展開で「頼りになる米国」を誇示したい考えだ。

 これに対し、中国の支援は見劣りが否めない。中国政府と中国赤十字はそれぞれ10万ドル(約1000万円)の支援金を送ると表明。1000万元(約1億6000万円)相当の物資の追加支援も発表した。

 中国外務省は台風30号被害から1週間以上たった16日、緊急医療援助隊を派遣する用意があると表明したが、南シナ海での領有権問題で関係が冷え込むフィリピンへの大規模支援は実現が難しい。(ワシントン 共同/SANKEI EXPRESS

 ≪自衛隊医療チーム、セブで本格始動≫

 自衛隊の国際緊急援助隊の医療チームが11月17日、台風30号で被害を受けたフィリピンのセブ島北部で活動を本格化させた。医師らはイラストで症状を示したカードを見せて、腹痛などの症状を訴える子供たちを問診し、薬を処方した。

 セブ島北部は台風が直撃したレイテ島に近く、停電が続いている。世界保健機関(WHO)が自衛隊に協力を要請していた。

 記者が同行した医療チームは医師2人を含む10人。北部の村タボゴンに到着すると、前日の事前調査で訪問を告げていたためか、集会所に子供や女性数十人が集まっていた。即席の診察コーナーが設営され、子供たちが列を作った。

 赤ん坊を抱えた女性(58)は「集落には医師もおらず、薬草でしのいでいた」と感謝し、水や食料が不足し、多くの子供が体調を崩していると訴えた。

 医療チームの荒科悠子(あらしな・ゆうこ)看護師(33)は「今後は子供の集団感染などに注意が必要だ」と話した。

 自衛隊国際緊急援助隊の中西信人隊長(50)は「最大の被害を受けたタクロバンは東日本大震災か、それ以上だ。ただ、そこばかりフォーカスされている。他に取り残されている場所があり気がかりだ」と語った。

 自衛隊はWHOなどと連絡を取り、活動範囲を広げていく。フィリピン国家災害対策本部によると、11月17日現在、死者は3681人、行方不明者は1186人。(フィリピン中部セブ 吉村英輝/SANKEI EXPRESS

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