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【台風30号比直撃】台風1週間 略奪横行 遅れる支援に被災者不満
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≪日本人84人なお安否不明≫
フィリピンに甚大な被害をもたらした台風30号の上陸から11月15日で1週間。被災者を支援するため、自衛隊の国際緊急援助隊の隊長ら3人が14日、在沖縄米軍の新型輸送機MV22オスプレイで、最大の被災地である中部レイテ島の中心都市タクロバンに到着、空港や上空から現地の状況を視察した。第1陣となる計50人の援助隊が本格的に活動する場所を近く最終決定するとみられる。
フィリピンの国家災害対策本部が14日までに確認した死者は2357人。国連人道問題調整室(OCHA)は14日、被災者が推計1150万人に上ると発表した。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は14日午前の記者会見で、新たに日本人9人と連絡が取れ、計49人の無事を確認したと発表した。なお84人の安否が分かっていない。
自衛隊の3人は14日朝、首都マニラのフィリピン空軍の基地からオスプレイに乗り込み、セブ島を経由し、14日午後、現地に到着。オスプレイには、米軍や援助関係者が乗り合わせた。中西信人隊長(50)は「隊員の安全を確保しつつ、自衛隊の力を最大限発揮できる場所を早く探す」と強調。15日にも別の被災地を視察する。
安倍晋三首相は13日、1000人規模の自衛隊の増派を決定。国際緊急援助隊の視察は、増派部隊の活動地域選定にも影響を与えるとみられる。フィリピン政府内にはレイテ島以外にも甚大な被害が出ているとして、救援が遅れている別の島での活動を求める声もある。
第1陣の援助隊は医師や看護師らの医療チーム20人と、連絡調整などを担う30人で編成。視察とは別に、援助隊の一部は派遣に備え被災地に近いセブ島に移動する予定。
レイテ島では水や食料、医薬品が不足し、遺体の収容も進んでいない。被災者の不満は高まっており、コメ略奪をめぐり死者が出るなど治安が悪化している。レイテ島には既に米軍が展開しているが、関係者によると、治安の悪化で、部隊の大半は日帰りで遺体収容などを続けている。(タクロバン 共同/SANKEI EXPRESS)
≪略奪横行 遅れる支援に被災者不満≫
レイテ島の中心都市タクロバンは11月14日も、被災直後かと思わせる混乱が続いていた。市内を歩くと、家屋や樹木のほとんどが倒壊していた。がれきの処理はほとんど手つかずで、電気や水道など生活インフラの復旧の見込みも立たない。人々は道路脇にトタンを組み合わせた仮住まいの小屋を組み、道ばたに材木を集め火をおこしていた。なんとか生活を自力で回復させようとしている。
復旧と支援が遅れる中、略奪など治安の悪化が深刻化しているという。看護師のフィビ・マバレさん(27)は、家の被害も限定的で食料や備蓄もまだあるが、島を出ることを決めた。
「身の危険を感じるようになったから」
レイテ島西岸の都市オルモックから車で約3時間。14日に通過したタクロバン近郊の山はココナツの木がなぎ倒され、緑に覆われていたはずの山は茶色く変わり果て、台風の猛威を思わせた。幹線道路でも中心部に近づくにつれ、放置されたままの倒れた電柱が増え、片側通行がやっとの部分も多い。
タクロバン中心部では、強固なはずの教会や街で最も大きなショッピングモールも壊れ、周囲の建造物は原形をとどめていない。人々は逃げ場もなく、風雨や高潮にもまれた。
路地裏では、半壊した家の前にがれきが山積みにされていた。道ばたには黒い袋に入った遺体が置かれ、腐乱臭が鼻をつく。短時間のうちに同じ光景を3度見た。車が横転したまま道をふさいでいる場所もある。
市内の高校に設けられた避難所では、子供たちが通路でバドミントンなどに興じていた。しかし、大人は支援物資の配給の遅れに不満を募らせている。
「空腹で仕方ない。政府は何をしているのか」。台風上陸前の(11月)7日から避難している女性(64)によると、コメや缶詰が配給されたのは13日で、14日にやっと水が届いたという。
マヒ状態の街中で、営業している店舗などは皆無。飲み物を買うには、露天のジュース売りぐらいだ。市役所周辺では携帯電話の充電や、水や薬品の配布などが行われているが、どこも長蛇の列をなしていた。
「各国からの支援が集まっており、活動は機能し始めている」。各国の支援部隊が集結する市中心部の競技場で、政府幹部の男性が話した。周辺ではヘリコプターが忙しく離着陸する。(タクロバン 吉村英輝/SANKEI EXPRESS)