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オバマケアまた後退 従来基準の保険認める
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バラク・オバマ米大統領(52)の看板政策である医療保険制度改革(オバマケア)がさらなる後退を強いられた。オバマ氏は11月14日、保険の品質向上を義務づけられた保険会社が加入者に値上げを伴う再契約を求めている問題を解消するため、再契約のケースに限り、2014年中は従来通りの保険の販売を認めることを発表。その日の記者会見では何度も謝罪と反省の弁を繰り返し、平謝りの姿勢だ。オバマ氏が見直しを決断した背景には、オバマケアへの不信感の高まりが、1年後に控えた中間選挙に影響するとの懸念がある。ただし今回の見直しが混乱を拡大させるとの指摘もあるほか、政府が開設したウェブサイトの障害の解消が想定していた11月末よりも後になる可能性も出ており、混乱を沈静化させられる見通しは立っていない。
米メディアによると、オバマケアが保険の品質の基準を厳しくした結果、新基準を満たさない保険に加入していた数百万人が、保険会社から内容見直しに伴う再契約通知を受けている。
オバマ氏がオバマケア関連法の成立前から繰り返してきた「加入中の保険が好みなら継続できる」との説明とそぐわない結果で、一部の加入者から「保険料が3倍にもなる」「他に安い保険が見つけられない」などの不満が噴出していた。
オバマ氏は会見で何度も「責任は私にある」と明言。加入中の保険を継続できるとの説明は「私の言い方が正確でなかった」「深く後悔している」と話した。また問題の背景について、再契約通知を受け、高い保険に加入せねばならない場合は保険加入義務の例外が認められると想定していたと説明。そのうえで「実際はそうでなかった」と自らの誤りを認め、謝罪した。
オバマ氏は7月にも、企業が従業員に医療保険を提供することを義務づける制度の開始を1年間先送りすることを決めている。オバマ氏は再びオバマケアの後退を余儀なくされた形だ。
背景にあるのはオバマケアが野党共和党だけでなく民主党内からも批判を受けているという事情だ。米下院はオバマ氏の見直し表明翌日の15日、オバマ氏が表明した見直しと同様に、保険会社に14年中は従来通りの保険の販売を認める法案を賛成多数で可決した。
新規の契約者にも販売を認める点で、オバマ氏の見直しよりも抜本的に制度を変更する内容だが、200人の民主党議員のうち39人が賛成票を投じ、8人が棄権した。民主党議員にはオバマケアの見直しに消極的な姿勢を示せば、1年後の中間選挙で攻撃材料にされるとの懸念があるためだ。
オバマ氏自身も14日の会見で、オバマケアの混乱が来年の中間選挙で「民主党の重荷になる」として悪影響を認めた。そのうえで「私は完璧ではないが、大統領でいる間は人々のために全力を尽くす」と述べ、修正に意欲をみせた。
ただしオバマ氏が今回表明した見直しは保険会社に従来通りの保険販売を認めるだけで、義務づけはしない。保険業界は決定済みのルールの変更に「市場の不安定化につながる」と反発しており、実際に従来通りの保険が販売されるかは不透明だ。また見直しの結果、オバマケアで提供する品質の高い保険の加入者が減れば、保険料が値上がりする懸念もある。ジョン・ベイナー下院議長(64)は14日、「完全に米国民を守る方法はオバマケアを潰すことだ」と述べ、対決姿勢を鮮明にしている。
また政府が10月に開設した各種保険を比較して購入できるウェブサイトの障害も解消に時間がかかる可能性がでてきた。オバマ政権はこれまで11月末までの障害解消を明言してきたが、キャスリーン・セベリウス厚生長官(65)は19日、「11月30日に魔法のように事態が急転するわけではない」と表明。米メディアでは「あからさまにハードルを下げた」(フォックステレビ)との指摘が出ている。
オバマ氏はウェブサイトについて、障害発覚から1週間たった段階でも「手直しで修正できる不具合だと考えていた」と認識の甘さを告白し、インターネットでの保険販売の難しさを「過小評価していた」としている。各社の世論調査でのオバマ氏の支持率は過去最低にまで落ち込んでおり、混乱の長期化はさらなる痛手となる可能性がある。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)