ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
【Q&A】ソチ五輪に暗雲 テロ阻止と欧米批判回避の両面作戦
更新
2014年ソチ冬季五輪会場。競技は、ロシア・ソチの市街地から約40キロ南東にある黒海沿岸の「アドレル」と、アドレルから約45キロ離れた山岳地域の会場「クラースナヤ・パリャーナ」の2カ所で実施。(C)Google ロシア南部の主要都市ボルゴグラードで昨年(2013年)12月末、爆破テロが2日連続で発生し、同じ南部のソチで2月に開幕する冬季五輪に暗い影を落としている。五輪成功に威信を懸けるプーチン政権はテロ阻止に全力を挙げている。
Q 何があったの
A (2013年)12月29日に駅舎、30日にトロリーバスでそれぞれ爆発が起き、計30人以上が死亡、多数が負傷した。2つの事件で使われた爆発物には同一の成分が含まれ、関連している可能性が指摘された。
Q テロなの
A ボルゴグラードは首都モスクワとイスラム過激派拠点の北カフカス地域を結ぶ交通の要衝に当たる。ロシアからの独立を目指す過激派は北カフカスに近いソチでの五輪を妨害すると宣言していて、開催阻止を目的とした犯行とみられている。
Q 政権の反応は
A プーチン大統領は「テロリストが全滅するまで戦いを続ける」と訴え、対テロ作戦の強化を誓った。年明けにはメドベージェフ首相とソチのスキー場を訪れて初滑りを披露し、五輪開催地の安全をアピールした。
Q 本当に安全なの
A 当局は観戦者に住所や氏名の登録と引き換えに取得できる「観戦者パスポート」の携帯を義務付けるなど、過去の五輪にはない厳しいテロ対策を立てている。ソチでは既に3、4人組の警官が巡回するなどの厳戒態勢を敷いた。
Q 不穏な雰囲気の五輪になりそうだね
A 治安の問題だけではないよ。ロシアでは昨年(2013年)、「非伝統的な性的関係」を未成年者に広める行為を禁じた同性愛宣伝禁止法が発効し、欧米諸国から差別的で人権侵害だとの指摘を受けている。
Q 同性愛者の選手もいるよね
A プーチン氏はこの法律が同性愛者の選手や観客に影響することはないと明言したが、反発は根強い。オバマ米大統領ら欧米首脳は五輪開会式への欠席を発表。政治的抗議とみられている。
Q そんな状況で五輪は成功するのかな
A プーチン政権は12月に政敵だった元石油大手社長のホドルコフスキー氏を釈放し、ロシア下院も約2万5000人の恩赦決議を採択した。ソチでは集会やデモを全面禁止する予定だったのを一定の条件下で容認すると方針転換。厳しい規制で治安維持を図る一方で、欧米の批判回避を狙う苦肉の策を強いられている。
≪液体の機内持ち込み禁止≫
ロシア各紙によると、ロシア航空当局は、ソチ冬季五輪開催に向けたテロ対策の一環として、ロシアを離陸する旅客機の乗客に対し、常時服用が必要な医薬品を除き、液体を機内に持ち込むことを全面的に禁止した。
過去に液体性爆発物を使用するテロ未遂事件があったことを踏まえた措置。これまでは0.1リットル以下なら、水などの持ち込みが可能だった。
メドベージェフ首相は1月9日、モスクワの主要駅の一つで、ソチ行きの列車が発着するクルスク駅を視察。昨年(2013年)末に南部ボルゴグラードの駅舎やトロリーバス車内で起きた自爆テロなどを受け、テロ対策に万全を期すよう求めた。
一方、ロシア連邦保安局(FSB)は、南部ダゲスタン共和国出身の男3人、女1人の計4人がテロ行為を行うためモスクワ入りしたとして、4人の顔写真を市内各所に掲示し、情報提供を求めている。このうちの1人はボルゴグラードでのテロに関与した疑いがあるとしているが、具体的にどの事件を指しているかは明らかにされていない。