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【Q&A】東電の再建計画 国が支援拡大 迫られる「脱ぬるま湯」
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総合特別事業計画について会見する東京電力の会長に就く数土文夫氏(左)と広瀬直己社長=2014年1月15日、東京都千代田区の東京電力本社(三尾郁恵撮影) 政府が東京電力の総合特別事業計画(再建計画)を認定しました。
Q 計画の柱は何ですか
A 福島の復興をスピードアップするため国が支援を拡大します。除染で出る汚染物を保管する中間貯蔵施設の建設や維持管理に必要な1兆1000億円の費用を国が出すほか、除染費用の一部2兆5000億円に、原子力損害賠償支援機構を通じて国が保有する東電株の売却益を充てることになりました。東電は負担が大幅に軽減され、廃炉と賠償に専念できるようになります。国の支援拡大の背景には、原発事故の対応に対する国際社会の厳しい視線もあります。
Q 東電自身の取り組みは
A 発送電分離を他の電力会社に先駆けて行います。国が進める電力改革で、2016年をめどに電力の小売りが全面自由化されます。新規参入の業者が送配電網を公平に使えるよう、大手電力会社に送配電部門を分社化させるのが発送電分離です。国の計画は、18~20年に実施となっていますが、東電は改革姿勢を示すため、16年4月に持ち株会社制を導入して発電、送配電、小売りの3部門を分社化し、一足早く分離に踏み切ります。
Q 企業としての成長戦略はありますか
A 電力販売を全国に広げるほか、ガス販売も本格展開します。総合エネルギー企業の育成を目指す政府の方針に沿った戦略です。火力発電のコストを下げるため、他社と提携して燃料をまとめ買いするのも主要な取り組みの一つです。
Q 電力業界でも競争が始まるのですか
A はい。電力会社は地域独占で競争とは無縁でしたが、これからはそうはいきません。自由化で料金やサービスの激しい競争になります。従来のぬるま湯体質から脱却しなければ生き残れません。4月にはJFEホールディングスの数土文夫相談役が社外取締役から会長に就任します。メーカー流のコスト意識がたたき込まれるはずです。
Q 計画は原発再稼働に触れていますか
A 柏崎刈羽原発(新潟県)を7月以降、順次再稼働すると仮定して、1000億円台の経常利益を安定的に確保する見通しを示しました。再稼働が大幅に遅れる場合は、14年秋に最大10%の抜本値上げが必要になると、料金を人質にしたようなことも書いています。でも、東電はすでに12年に抜本値上げしている上、最近は円安の影響で、燃料価格を反映する毎月の料金改定でも上昇傾向が続いています。再値上げとなれば家計は一段と圧迫されることになります。
Q 都知事選では脱原発も争点です。再稼働への影響はないですか
A 脱原発を掲げる細川護煕(もりひろ)元首相が当選すればもちろんですが、落選した場合でも一定程度得票すれば、政府は民意を意識して簡単には再稼働を許可できないでしょう。それに柏崎刈羽原発がある新潟県の泉田裕彦知事が再稼働には厳しい態度をみせていますからハードルは相当高いです。
Q 道は険しそうですね
A 東電は30年代前半の「脱国有化」完了を想定していますが、難問山積で容易ではありません。国の関与が弱まった時、東電が廃炉や賠償を責任を持って続けるのか不安もあります。
≪柏崎再稼働で黒字1000億円≫
東京電力は総合特別事業計画で、柏崎刈羽原発の7月以降の順次再稼働を前提に2015年3月期以降1000億円台の経常利益水準が定着する収支予想を示し、料金値下げによる利益還元方針も打ち出した。
東電によると、再稼働による燃料費削減効果は1~5号機で1基当たり年間1000億~1450億円。再建計画では、新潟県中越沖地震後一度も動いておらず、新潟県が安全性を不安視している2~4号機の再稼働なしでも同水準の利益を確保できるとしたが、その場合は「値下げ余地が縮小する」とした。
6、7号機の安全審査申請で再稼働に向けた手続きが進み、将来にわたり黒字経営が維持される見通しが示されたことで、金融機関にとって融資を実行しやすい外形的な状況が整った。
東電は東日本大震災の影響で12年3月期4083億円、13年3月期3776億円と2年連続で大幅な経常赤字を出した。14年3月期は271億円の経常黒字を確保する見通しで、金融機関から融資の条件に課された3年連続経常赤字回避の目標はクリアしそうだ。(SANKEI EXPRESS)
2011年3月11日 東日本大震災、福島第1原発事故が発生
2012年7月31日 国が原子力損害賠償支援機構を通じて1兆円を出資し実質国有化
2012年9月1日 家庭向け電気料金を平均8.46%値上げ
2013年9月27日 柏崎刈羽原発6、7号機の審査を原子力規制委員会に申請
2014年1月15日 政府が新総合特別事業計画を認定
2014年度 グループで2000人規模の希望退職
2014年度 電力の全国販売開始、ガス事業の新体制立ち上げ
2015年度 福島復興本社を避難指示区域へ移転
2015年度 支店の廃止
2016年度 持ち株会社制へ移行
2016年度 社債市場へ復帰
2016年度 国の議決権比率50%未満への引き下げ判断
2030年代前半 脱国有化を完了