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政治
東京五輪・パラリンピック組織委が発足 森-武藤体制でオールジャパン牽引
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2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会が発足し、笑顔で記念写真に納まる(左から)秋山俊行東京都副知事、武藤敏郎(としろう)事務総長、森喜朗(よしろう)会長、竹田恒和(つねかず)JOC(日本オリンピック委員会)会長、下村博文(しもむら・はくぶん)文科相、鳥原光憲(みつのり)JPC(日本パラリンピック委員会)委員長=2014年1月24日夜、東京都新宿区・東京都庁(大橋純人撮影) 2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は1月24日、東京都庁で設立理事会などを開いて発足した。会長には森喜朗(よしろう)元首相(76)、実務面の責任を担う事務総長には元財務次官の武藤敏郎(としろう)・大和総研理事長(70)が就任。五輪招致を勝ち取った政官財一体の「オールジャパン体制」を継承し、6年後の大会開催に向けた準備に取りかかる。
組織委は招致段階で掲げた「安心、安全、確実」な大会運営を実現するため、競技会場や関係者の宿泊施設の整備、輸送体制の構築、入場券販売などで中心的な役割を担う。約3000億円と見積もられる大会運営費のうち、1000億円余りを民間からの寄付やスポンサー収入などに頼る計画だ。
都庁で会見した森会長は「五輪開幕まで2373日、パラリンピックまで2405日。大会の成功に向けて献身していきたい。組織を背負う大きな責任を考えると身が引き締まる。強い組織づくりに加え、関係者が一丸となる必要がある」と述べた。
今後はスポンサー獲得など課題も多いが、森会長は「幅広くお願いしないといけない。まだ6年じゃなく、もう6年しかないという思い」と気を引き締めた。
また、事務方のトップの武藤事務総長は「さまざまな視点に立って、大きなチームをゴールに導きたい」と決意を語った。
事務局は都庁内に開設され、都や日本オリンピック委員会(JOC)、民間からの出向者を含む約50人体制で発足。五輪直前には約3000人に膨らむ。
都知事不在の状態で船出となったが、2月9日の都知事選の結果を待ちソチ五輪後に本格稼働する。
≪森-武藤体制でオールジャパン牽引≫
2020年東京五輪・パラリンピックの準備と開催を統括する大会組織委員会が1月24日発足し「森喜朗会長-武藤敏郎事務総長」体制が始動した。2人は森政権時代に首相-財務事務次官の関係で国家運営に当たった。再び「二人三脚」を組む2人が、国家的プロジェクト成功への命運を握る。
森氏は2月7日にソチ冬季五輪が開幕するのに合わせ、武藤氏とともに現地入りする意向。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長ら関係者と意見交換する見通しで、両氏の最初の大仕事になりそうだ。
組織委は、会場整備や関係者の宿舎の確保、入場券の販売などで中心的な役割を担う。テロ対策などでは国との連携が不可欠で多種多様な分野への目配りが必要になる。
森氏は、安倍政権に影響力を持ち、政財官界からスポーツ界まで幅広い人脈で知られる。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(61)ら多くの外国要人とも親交がある。
実務を一手に担う武藤氏は大和総研理事長で、かつては霞が関の「大物次官」だった。森政権に続く小泉政権時代には財政再建路線を主導し、行政手腕を評価する声がある。タッグを組む森氏とは旧知の仲。1966年に大蔵省(現財務省)へ入省。その後、森氏の地元・石川県へ商工労働部長などで出向。長年交流を続けており、森政権下の2000年6月、次官に就いた。「森元首相が最も頼りにする人物の一人」(財界長老)だ。
一方、本来は組織委設立で責任のある日本オリンピック委員会(JOC)と東京都は人事決定の段階から政府に主導権を握られ、影が薄かった。
大会開催には巨額の資金が必要となるため、JOCの竹田恒和(つねかず)会長(66)はトップに財界人の起用を目指したが、候補者を説得できず実現しなかった。事務総長の人選は、森氏の意向が強く反映されたとみられ「政府関係者一色になる事態は避けたい」(JOC幹部)との不安が現実になった。
東京都は、徳洲会(とくしゅうかい)グループからの5000万円受領問題で、五輪招致の旗振り役だった猪瀬直樹知事(67)が辞職してトップ不在に陥ったことで、一気に発言力が低下。都幹部を「知事がいないのは、やはりつらい」と嘆かせた。「組織委がこういう体制になったのも、猪瀬知事の辞任と無関係ではない」との声も聞かれる。
五輪招致成功の鍵は政財官にスポーツ界が一体となった「オールジャパン体制」の構築にあったとされるが、早くも不協和音が漏れる。JOC関係者は「この体制では、政府の思惑通りに進められてしまうのではないか。大会運営で最も大事なスポーツ現場の目線が反映されるのか心配だ」と気をもんでいる。(SANKEI EXPRESS)