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シリア直接協議で初の成果 政権側、女性・子供の避難に同意
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シリア内戦をめぐる構図=2014年1月22日現在、※写真はロイター ≪人道支援ルート確保なお調整≫
シリア内戦の終結に向けた当事者間の直接協議を仲介するラフダール・ブラヒミ国連・アラブ連盟合同特別代表(80)は1月26日、反体制派の拠点で政府軍が包囲する中部ホムス旧市街からの女性と子供の避難にアサド政権側が同意したと明らかにした。実現すれば、25日に始まった直接協議で初の成果となる。
政権側と反体制派統一組織「シリア国民連合」の代表団は27日、政権移行の議論も始めるが、バッシャール・アサド大統領(48)の処遇をめぐり双方の意見の隔たりは大きい。
ホムスはシリア中部の交通の要衝で、内戦の本格化後に戦闘が激化した。旧市街では政府軍の包囲で住民が1年以上、身動きできない状態が続いている。
ただ、政権側は反体制派の戦闘員が脱出することを防ぐため、避難する女性や子供の名簿提出を求めた。また、政権側は反体制側が阻止しない場合のみ避難が可能としており、実現には不透明さもある。一方、国民連合側は反体制派武装勢力による拘束者の名簿作成に努めることを約束した。
ホムスへの人道支援ルート確保をめぐっては、政権側が国内調整が続いているとし、26日の決着は見送られた。ファイサル・メクダド外務副大臣は「認める用意はある」としている。
シリア内戦をめぐっては、日本を含む約40カ国による国際和平会議が米露主導により実現。(1月)22日にスイス西部モントルーで行われた閣僚級会合で、政権側と国民連合側代表の初対面が実現した。(SANKEI EXPRESS)
≪ブラヒミ氏 協議手探り、混乱回避に気遣い≫
アサド政権と反体制派統一組織「シリア国民連合」の直接協議では、双方が初めて交渉のテーブルについたとはいえ、緊張が続いている。仲介役のブラヒミ国連・アラブ連盟合同特別代表は細心の注意を払い、日々手探りで協議が継続するよう努めている。「協議を続けなければならないとの意識があり、全体的に満足している」。ブラヒミ氏は1月26日の協議後、双方の雰囲気について問われ、こう答えた。
直接協議は25、26両日の2日間で計約4時間。双方は国連欧州本部内の一室でU字テーブルを挟んで相対する。ただ、互いの接触を避けるため、出入りには別々の扉が使われ、発言はブラヒミ氏に向かって行われる。「直接協議」だが、互いに言葉は交わさない。
「一緒に座るのは容易でないが、国民のためだ」。国民連合代表団のメンバーはその心境を吐露した。反体制派、政権側とも背後には直接協議の実現を主導し、それぞれを後押しする米露の存在がある。別の反体制派の一人は「両国に嫌とはいえない」と語る。
直接協議の「場外」では、協議内容の解釈をめぐり、双方がメディアに発信している。ブラヒミ氏はこうした行為が協議に悪影響を与えることを懸念し、「双方はそれぞれの見解を言っているだけだ。私の見解は私が言う」と混乱収拾に努めている。
根深い敵意を持つ当事者が交渉の席についた意義は小さくない。ただ、27日以降、政治解決の「核心」部分である移行政権の議論が本格化すれば、協議はより困難さを増す。
国民連合側のスポークスマンは27日の協議を「独裁から民主主義に向けた移行の始まり」とアサド大統領退陣への議論と位置付ける。退陣を否定する政権側は「ダマスカスへのカギは渡さない」(ファイサル・メクダド外務副大臣)と反論した。
「性急すぎるより、ゆっくりやるのがいい」とブラヒミ氏は慎重に議論を進める意向だ。交渉期限を問われたブラヒミ氏は「その話は時期尚早だ。われわれの期限は『明日』だ」と述べた。(ジュネーブ 宮下日出男/SANKEI EXPRESS)