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【タイ総選挙】混乱続くタイ 3つのシナリオ 全て八方ふさがり

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【タイ総選挙】混乱続くタイ 3つのシナリオ 全て八方ふさがり

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 タイの政治混乱に収束の兆しが見えない。インラック政権が2月2日に強行した総選挙(下院、定数500)は、反政府デモ隊の妨害により約2割の69選挙区で投票が中止に追い込まれた。政権側は再選挙で総選挙を正当化するとしているが、デモ隊は妨害を継続する構えだ。政権側と反政府派が対話に動く気配がない中、タイは今後どうなるのか。3つのシナリオが浮上している。

 (1)再選挙実施

 選挙翌日の3日、バンコク中心部の戦勝記念塔交差点では、反政府デモ隊がテントやステージの撤収を行った。1月13日から「首都封鎖」と称して主要交差点7カ所を占拠してきたが、今後は目抜き通りの4カ所に資材やデモ隊を集中させ、長期戦に備えるという。作業中の男性は「腐敗した政権を打倒するまで抗議活動はやめない」と話した。

 政権側は、妨害活動で投票中止に追い込まれた選挙区で選挙をやり直す方針。最大野党の民主党は選挙をボイコットしており、圧勝は確実だ。議会開催に必要な数の議員を選出するまで「4~6カ月はかかる」(選挙管理委員会)というが、デモ隊の妨害でさらに延びる可能性もある。

 その間、インラック政権は温存されるが、選挙管理内閣のため権限が制限され、1月には着手するはずの来年度予算編成など内政はストップ。外交への影響も避けられない。

 (2)憲法裁が無効判断

 政治の空転回避に向けて動向が注目されているのが憲法裁判所だ。

 民主党は今回の選挙が「全国で同一の日に実施」と定めた憲法に違反するとして、憲法裁に無効を訴える方針。認められれば選挙はやり直しとなる。

 今回の反政府デモは、インラック・シナワット首相(46)が昨年(2013年)11月、汚職の罪で国外逃亡中の兄、タクシン・シナワット元首相(64)の復権に道を開く恩赦法案を強行採決しようとしたことが発端だ。憲法裁判所はタクシン氏が失脚した2006年以降、一貫してタクシン派に不利な判決を下し続けており、無効判断の可能性は高いとみられている。

 ただ、チュラロンコン大学のポンサン教授は「選挙をやり直しても今回と同じトラブルが繰り返される」と指摘する。

 それを避けるには、反政府派が主張する選挙前の「政治改革」が必要だが、自らが不利になる改革に政権側が応じるのは困難で、今回の選挙で投票した北部や東北部のタクシン派の反発も必至だ。

 (3)首相失職

 反政府派勢力に、タクシン派の押さえ込み役として期待されているのが軍だ。06年にクーデターでタクシン氏を失脚させて以降、タクシン派に圧力をかけ続けてきた実績がある。

 だが、今回の選挙では4司令官全員が投票し反政府勢力と距離を置くなど「クーデターの可能性は低くなった」(外交筋)。過去の政治対立を調停してきたプミポン国王(86)も今回は目立った発言をしていない。

 このため反政府派は法的にインラック政権を失脚させる作戦も描いている。デモ隊を率いるステープ・トゥアクスバン元副首相(64)は2日夜、「成立見通しがない選挙に38億バーツ(約118億円)をかけ無駄にした」として、インラック氏を訴える構えを見せた。

 インラック氏をめぐっては、コメの買い上げ政策をめぐり、汚職追放委員会も捜査を進めるなどさまざまな追及の手が伸びている。

 ただ、インラック氏を失職に追い込んでも、誰が後継首相に就くのかなど、法的な規定がない問題が数多く立ちはだかる。

 八方ふさがりの状態となったタイの政治。混迷が長期化することだけは間違いない。(バンコク 吉村英輝/SANKEI EXPRESS

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