ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
科学
中国の新型H7N9とアトリ 大和田潔
更新
鳥インフルエンザ(H7N9型)ウイルス発生の仕組み=2013年4月21日現在
インフルエンザが猛威をふるっています。この1週間で187万人が発症したそうです。今年はいろいろな型が混在して流行しています。昨年(2013年)、NEJMという医学雑誌に中国で発生している、H7N9型インフルエンザの論文が掲載されました。「新型H7N9鳥インフルエンザによるヒトへの感染」(Human Infection with a Novel Avian-Origin Influenza A(H7N9) Virus)という論文です。
その中に、新型ウイルスの誕生について興味深い情報が掲載されていました。アトリ(花鶏、brambling)というスズメ目の鳥で、スズメよりも一回り大きな渡り鳥がいます。アトリは、ユーラシア大陸で繁殖し、冬鳥として秋から冬にかけて日本各地に飛来します。日本海を渡り、日本海側の県に到着してから各地に飛んでいきます。
冬鳥は、シベリアを含むユーラシア大陸など北方の地方で繁殖する鳥です。繁殖地が寒くなる冬に、越冬のため日本に海を越えて渡ってきます。冬の間、日本国内で過ごし、春になると繁殖のために北方に帰っていきます。冬に北海道などで見かける白鳥や鶴などが有名です。アトリも同じ習性を持ちます。
インフルエンザウイルスは鳥の細胞の中で増えやすいウイルスです。インフルエンザワクチンを鶏卵で作るのはそのためです。冒頭の論文には、アトリが持っているH9N2に、アヒルと野生の鳥のインフルエンザウイルスの遺伝子が組み込まれ、ヒトに感染する新型H7N9になったことが示されています。複数のインフルエンザウイルスに感染した鳥の体内で遺伝子の組み換えが起き、ヒトにも感染するウイルスが誕生したようです。
「中国3省で3人感染 鳥インフルH7N9型」(MSN産経ニュース2月8日)の報道では、中国の3つの省でH7N9鳥インフルの新規感染者が確認されています。感染者は計178人で、36人が死亡していますが、日本ではまだ確認されていません。感染後、診断が遅れているうちに、肺の病変が急速に進行して呼吸困難になっています。今のところタミフルやリレンザといった、従来の抗インフルエンザ薬が有効のようです。きちんと検査を受けて治療を受けることが重要です。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS (動画))