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まっすぐな主人公を通し、心を動かしてもらいたい 舞台「夜中に犬に起こった奇妙な事件」 森田剛さんインタビュー
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「人生は恐れを知らぬ冒険か、無」と言ったのはヘレン・ケラーだが、発達障害の一種、アスペルガー症候群の少年の冒険を描いた「夜中に犬に起こった奇妙な事件」もまた、生きることは素晴らしいと伝える物語だ。
英ウエストエンドで2012年に舞台化され、昨年(2013年)「ローレンス・オリビエ賞」7部門を獲得したこの作品が、少年役に森田剛(35)を迎え、4月4日から日本初上演される。
「うーん、人って何なんでしょうね…。(物語の理解が進むうち)すごくそんな気持ちになるんです」。人の気配がまばらな午後9時の稽古場で、森田はとつとつと言った。
人とは何か、幸せとは何か。森田が演じる「幸人」の名は、物語のメッセージを表すようだ。アスペルガー症候群で、人と交わるのは苦手。父(入江雅人)に守られ、自分の世界に閉じ籠もってきた幸人がある日、殺された近所の犬の死の謎を追いはじめる。
白か黒でしか理解しない幸人が、曖昧な灰色の実社会で突き止める「ほんとうのこと」は、大人には不都合なものばかり。隠した嘘を暴かれ動揺する幸人の父。不器用に、まっすぐ真実に向かう幸人が一番、強く見える。
「本当は幸人のほうが周りの大人たちより生きづらいはずなのに。途中から幸人の行動で周りが傷ついていきますが、ひっかきまわす幸人は、自分を崩さず、はっきりと彼の道を進む。まっすぐな幸人を通して、笑ったり悲しんだり、心を動かしてもらいたいなって」
幸人の根底にある、自分を信じる力の強さをどう演じるか。アスペルガー症候群を持つ幸人に特有のコミュニケーションの困難さを表現しつつ、共演者とはどう意思疎通を図って舞台を回すのか…課題は多いという。
「とても苦労しています。お芝居はコミュニケーション。でも幸人は人と目を合わせず“閉じ”なければいけない。今までにない役の作り方です。でも、そこがつかめたら楽しい話になるし、そうなるように今、頑張っています」
これまではどこか影のあるイメージの役柄の印象が強かったが、一転してピュアな少年役。「いつも特にどんな役がやりたいとかはないです。そのときいただいた話に興味があるかどうかで」選ぶ。本作の出演は、鈴木裕美演出というのが大きかった。「すごく細かく演出をつけてくれる、とか稽古が充実していると聞いていて。噂通りでした」。鈴木とは、幸人の心情を場面ごとに細かく「こうじゃないか」と詰めていく。森田は稽古中、体よりもまず頭が疲れたという。「裕美さんのエネルギーもすごいし、幸人の言葉にはなに一つ適当なところがないから。私生活もひっくるめて舞台に絡めとられています。すごく頭を使うので、稽古が終わって家に着いたらソッコーで寝ています」
蜷川幸雄、宮本亜門…名だたる演出家の舞台を経験、着実に研鑽を積んでいる。舞台にこだわりは、と聞くと「裕美さんにも、テレビや映像やらないの、って聞かれましたが、(舞台が続くのは)たまたまです」としながらも、「確かに、舞台の作り方は自分に合っている。一つの役を長い間考えていられるし。今日はこんなふうに試してみよう、という欲も出せて楽しい。毎日同じことをやっている、という感覚は全くないです」と目を輝かせる。
前作「鉈切り丸」(13年)では、全幕背中を丸めた異形の姿勢で激しい殺陣を連日演じ、共演の成海璃子が「森田さんを見ると私は疲れたなんて言えない」と言うなど、文字通り背中で舞台を引っ張った。
「先頭(主役)にいる立場じゃないですか。先頭が疲れていると、現場が“ぬるっ”としてしまう。下手でもいいから、とにかく頑張る。一緒に舞台を作る人々に信じてほしい、っていう気持ちがいつもあります」
本当は毎回、くたくたになるという。「今後舞台を続けていきたいから、なるべく疲れないよう、自分のルールを作りたいと思っています」。だから今回、幸人よろしく、稽古場で舞台俳優の先輩たちに、聞き込みを開始。「絶対家では台本を見ない、という方もいました」。森田はどうかと聞くと、常に台本はカバンにあり、暇さえあれば見ている。「まだまだ場数を踏んでいないし、自分のペースができていないから、余計に疲れちゃうんですよね。長く舞台を続けられるコツを勉強したいなあ」
楽しそうに語る表情から、舞台が大好きなんだという充実感が、強く伝わってきた。(津川綾子/SANKEI EXPRESS)
4月4~20日 世田谷パブリックシアター(東京)。東京グローブ座(電)03・3366・4065。4月24~29日 シアターBRAVA!(大阪)。キョードーインフォメーション (電)06・7732・8888