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「亡き父と修復」 平安の色よみがえる 平等院鳳凰堂 1年半ぶり内部拝観再開
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京都府宇治市の世界遺産・平等院の鳳凰堂は半世紀に1度の大修理をほぼ終え、平安時代の建立当初の姿がよみがえった。4月3日、内部拝観が約1年半ぶりに再開された。
平等院によると、鳳凰堂の修理は2012年9月に開始。建立当初の姿に近づけるよう、1950年代の前回の修理から年月を経て傷んだ屋根瓦を、光沢のない「古色仕上げ」に替えた。一対の鳳凰像には金箔を施し、扉や柱を赤茶色の顔料「丹土」で塗り直した。
堂内は改修されていないが、本尊は仏師定朝作の阿弥陀如来坐像で、その周囲の壁面には雲中供養菩薩像が掛けられ、浄土さながらの優美な造りだ。
修復された平等院鳳凰堂は、柱や扉を赤茶色の顔料で塗り直すなど、平安時代の建立当初の姿が再現された。その陰には、父の遺志を引き継ぎ、「幻の色」復元にかける修復師のこだわりや情熱があった。
1950年代の修理では、中堂の軒下に斜めに並ぶ「支輪板」の彩色を川面稜一(かわも・りょういち)さんが復元した。川面さんは建造物彩色の職人で、多くの国宝をよみがえらせてきた。82年には京都市右京区に川面美術研究所を設立。2005年、91歳で他界した。
今回、川面美術研究所所長で娘の荒木かおりさん(56)は、長さ約60センチの支輪板115枚に描かれ、浄土に咲くとされる草花の「宝相華文」と「蓮華文」の復元を担当した。「時代性を大事にするように」との父の言葉を胸に、鳳凰堂を何度も訪問。板に特殊な方法で光を当てるなどして文様や彩色を研究した結果、カイガラムシから抽出したえんじ色の有機顔料が使われていたことを突き止めた。
えんじ色は紫外線を浴びると色が消える。復元に当たっては、えんじ色に濃い朱色を2割ほど忍ばせた。半世紀後、えんじ色が再び消えても、濃い朱色が浮かび上がる。次の修復者に、職人としてのこだわりを直接伝えたいとの思いからだ。
関西の寺を巡り、草花がどのように描かれていたかを調査。鳳凰堂と同時代の建立で、保存状態の良かった浄瑠璃寺(京都府木津川市)で、幅が太く描かれているのを見つけた。父は草花の縁取りを繊細に描いていたが、骨太な線幅を採用した。
「復元は亡き父と対話しているようでした」。仕事を終えた荒木さんは、ほっとした表情を浮かべた。(SANKEI EXPRESS)
内部拝観は1回20分、50人ずつの入れ替え制で、受け付け開始は午前9時10分から。拝観料とは別に300円が必要。