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【韓国旅客船沈没】船内からメール 生存信じる家族

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【韓国旅客船沈没】船内からメール 生存信じる家族

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【韓国旅客船沈没】沈没までのイメージ=2014年4月16日午前9時ごろ、韓国の旅客船「セウォル」号(乗客乗員計475人に訂正、6825トン)が珍島付近を航行中に遭難信号を発信した。※聯合ニュースによる  ≪死者10人、不明者287人 急な針路変更、原因か≫

 韓国南西部全羅南道の珍島(チンド)近くの海上で旅客船「セウォル号」(6825トン)が沈没し、修学旅行の高校生ら10人が死亡、多数が行方不明となっている事故で、韓国海洋警察は4月17日、業務上過失致死傷容疑で船長の男を事情聴取した。事故当時の操舵(そうだ)状況や乗客の避難誘導などについて聴いたとみられている。船長は16日の事故直後に船を離れ、救助されていた。

 沈没原因をめぐり聯合ニュースは、事故直前、セウォル号が急に針路を変更し、貨物室のコンテナなどが船体の一方に片寄ったことでバランスが崩れた可能性があると報じた。また、セウォル号の操舵手は文化日報のインタビューに、船が以前に船尾部分の船内を増築して以降、左右の揺れが大きくなったと証言した。韓国当局はこうした情報も含めて、転覆原因との関連について検証する構えだ。

 一方、安否不明者の捜索、救助活動は17日早朝から、海洋警察と海軍の特殊部隊が投入され、船内の捜索などを再開した。韓国当局は船内に空気が残る「エアポケット」と呼ばれる空間で不明者が生存していることに望みを懸けている。浮力の確保とエアポケットの拡大のため、機材で船内に空気を送り込む作業に着手したが、船体は流されながら徐々に沈んでおり、時間との闘いになっている。

 また、韓国政府は462人としていた沈没船の乗客乗員数を475人に訂正。これまでに179人を救助。しかし10人が死亡し、287人が依然行方不明のままだ。17日午後には朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)が船で現場海域を視察した後、現場に近い珍島の体育館で、不明者の家族らと面会した。(ソウル 加藤達也/SANKEI EXPRESS

 ≪船内からメール 生存信じる家族≫

 「愛してる」「許してね」。「セウォル号」が4月16日に転覆した直後から、絶望の船底から家族や友人の元へ、生存の証しがメールで届いた。「まだ生きている」と祈りながら、珍島(チンド、韓国南西部)沖合を見つめる家族たち。そのいちるな思いをよそに、船長や乗組員はいち早く船外に逃避した。生存の可能性がある「黄金の72時間」を阻む冷たい外海。懸命の捜索もいまだ、奇跡にはたどり着いていない。

 「愛してる」「許してね」

 沈みいく船に残された高校生らが家族への思いを託したのは、携帯電話のメッセージだった。沈没後、半日以上たった後も「船内に閉じ込められている」とのメッセージが届いたとの情報が舞い込み、17日も現場近くで捜索を見守っていた家族らは焦燥感を募らせた。

 「僕は話せそうにないから(メッセージを)送っておくよ。愛している」

 聯合ニュースなど、韓国メディアによると、修学旅行中の男子高校生は、母親の携帯にこう送信した。母親はこのとき、息子が乗る船が沈みかかっているとは思いもしなかったという。

 女子高校生(18)は、父親に「友達と集まっているから心配しないで」と送信した。「外へ出て」との父からの返信に「船が傾きすぎて出られないの」と逼迫(ひっぱく)した状況を伝えた。

 船が急激に傾きだした16日午前9時25分ごろ、乗客の一人は「部屋の傾斜が45度。メッセージがうまく送れない。救助が来たみたい」と兄へのメッセージに焦りをにじませた。兄は「気を確かに。つながればまた連絡しろ」と返したが、このやり取りを最後に連絡が途絶えたという。

 「私たち本当に死ぬかも」という悲痛なメッセージに加え、高校生同士メッセージ交換をする携帯の掲示板には、船が沈み始めた16日午前9時ごろから親友に“最後”の言葉を伝えようとする書き込みがあふれた。生徒の一人は「皆、私がよくなかった部分は全部許して。愛している…」と書き残した。

 船長ら早々に脱出

 一方、海洋警察から業務上過失致死傷容疑で事情を聴かれている「セウォル号」の船長が、乗客の避難誘導をせずに早々に船体を離れて救助されていたことが分かり、安否不明者の家族らから怒りを買っている。

 韓国メディアによると、船長以下1等航海士や機関士ら約30人の乗組員が乗船していたが、船内放送で避難誘導をして逃げ遅れた女性乗員を除き、全員救助された。

 船長は、最初の遭難信号から約40分後の16日午前9時半ごろ甲板に出て、その20分後、機関士や操舵手(そうだしゅ)ら乗員6人とともに最初に救助された一群にいた。(ソウル 加藤達也/SANKEI EXPRESS

 ■セウォル号 韓国北西部の仁川と南部の済州島を週2回結ぶ定期旅客船。韓国メディアによると、日本で1994年に建造され、約18年間運航後、2012年に韓国側が入手、昨年(2013年)3月に運航を開始した。全長約146メートル、幅約22メートル。定員は約920人。韓国で運航中の旅客船の中では最大規模。通常は午後6時半に仁川を出発、約6時間半かけて翌朝に済州島に到着する。14年4月16日、韓国南西部の珍島付近で沈没した。

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