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社会
【This Week】(2月10~16日) えひめ丸事故13年 「この日だけは祈りを」
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米ハワイ沖で米原潜が愛媛県立宇和島水産高校の実習船えひめ丸に衝突し、生徒ら9人が死亡した事故は、2月10日で発生から13年。毎年、この日に開かれる追悼式は今年から簡略化されることが決まった。亡くなった教諭の中田淳さん=当時(33)=の妹で、広島県福山市に住む香織さん(40)は「形が変わっても、この日だけは犠牲者に祈りをささげてほしい」と願う。
例年の追悼式は高校の体育館で在校生や遺族らが黙祷(もくとう)。その後、生徒会が事故の経緯を発表し、合唱団が鎮魂歌を披露してきた。今年からは一部遺族や負傷者の要望を受け、黙祷と献花のみにする。香織さんは学校の方針を理解しつつも「事故を『終わった出来事』にはしないで」と訴える。
淳さんは生徒を釣りに誘ったり、試験中にヒントを出そうとしたりする、兄貴分のような存在だった。事故前には荷造りをしながら「船で何かあっても生徒を逃がさにゃ俺は上がらん」と香織さんに話していた。
事故から8カ月後、沈没した船内で遺体が見つかった。だが香織さんには「いたずら好きな兄ちゃんが突然帰ってきて驚かせてくれる」との思いが消えない。「帰ったら見たいだろう」と山口県長門市の実家には事故を伝える新聞やニュースの録画ビデオを保管する。
香織さんは、仕事の都合で参加できずにいた追悼式に昨年(2013年)、初めて出席。スクリーンに映るえひめ丸の写真を真剣に見詰める生徒らを見て「兄ちゃんが勤めたのはいい学校だな」と涙が出た。
「子供たちは2月10日に事故と向き合い、今日をうんと楽しく生きようと思ってほしい」。香織さんが在校生に寄せる思いだ。(SANKEI EXPRESS (動画))