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政治
【日米首脳会談】豚肉が最大障壁 TPP「大筋合意」遠く
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4月24日行われた安倍晋三首相とバラク・オバマ大統領の日米首脳会談で最大の難関となったのは、やはり環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)だった。両首脳はTPPの戦略的重要性では認識が一致したものの、目標としてきた「大筋合意」は遠かった。首脳会談終了後も閣僚協議を継続し、共同声明の発表も協議の結果を待つという異例の展開に。交渉の難航を受け、東京株式市場では「失望売り」が膨らんだ。
会談後の共同記者会見では、両首脳の思惑の違いがクッキリと浮かび上がった。
安倍首相「わが国としては(重要農産品5分野の関税維持を求めた)国会決議を受け止め、国益にかなう最善の道を求めていく」
オバマ大統領「日本経済において、農産品、自動車といった分野の市場の開放度が制限されている。今こそ、解決すべき時だ」
大統領はさらにプレッシャーをかけてきた。「安倍首相も私も政治的な問題を抱えている」とした上で、日本に対し「自分たちの心地よい場所から踏み出して、他国の市場にアクセスするのが重要だ」と強調。歴代の自民党政権によって保護されてきた日本の農業への痛烈な批判を浴びせた。
「早期の日米合意は困難」-。株式市場にはこんな観測が広がり、日経平均株価は一時、前日比で180円近く値を下げ、終値は141円28銭安の1万4404円99銭に終わった。
首脳会談で、目標としてきた「大筋合意」を宣言できなかったのは、甘利明(あまり・あきら)TPP担当相と米通商代表部(USTR)のフロマン代表による23日の2度にわたる閣僚折衝で、最終的な妥協点を見いだせなかったためだ。両氏の会談は23日夕にいったん終了したが、深夜になって再開し、24日午前3時ごろまで続いた。
最大のネックとなったのは、重要5分野のうち豚肉の関税の扱いだ。安い豚肉に高い関税を課す「差額関税制度」をめぐり、米国は輸入価格が1キロ当たり64円程度を下回る豚肉にかける482円の関税を2桁台まで下げるよう要求。日本は100円程度を主張した。
難航していた牛肉の関税率(現行38.5%)についても、日本は日豪経済連携協定(EPA)で合意した20%前後への引き下げを譲歩の目安としているが、米国と折り合えていない。
連日の交渉で疲労の色を隠せない甘利氏は、記者団に思わずこぼした。
「もう一回この担当大臣をやりたいかといわれたらやりたくないです」(本田誠/SANKEI EXPRESS)
≪未来変える若者「ガンバッテ」≫
オバマ米大統領は4月24日午後、東京都江東区の日本科学未来館と渋谷区の明治神宮を訪れた。未来館では高校生や大学生を前に演説し、「日本と米国が技術革新を牽引(けんいん)してきた」と強調、若者には未来を変える力があるとして「ガンバッテクダサイ」と日本語で激励した。
未来館は、館長を務める宇宙飛行士の毛利衛(もうり・まもる)さんの案内で視察。ホンダの二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」も見学し、アシモが蹴ったサッカーボールを右足で受け止め、「すごい」と感心した様子だった。
オバマ氏は続いて明治神宮を参拝した。おはらいを受けてから玉串をささげて拝礼。宮司から神社や神道に関する説明を受け、真剣な表情で聞き入った。
絵馬掛け所では「世界の人々が正義、平和、繁栄の実現へ団結しますように」との祈願文を絵馬に書き込んだという。その後、ケネディ駐日米大使らと談笑しながら流鏑馬(やぶさめ)を見物した。
明治神宮によると、米大統領による訪問はカーター、レーガン、ブッシュ(子)各氏に続き4人目。(共同/SANKEI EXPRESS)