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【勿忘草】怖い「ベルばら」

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【勿忘草】怖い「ベルばら」

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 始めは腹部にちょっとした赤い発疹ができただけだった。幼いころからアトピー性皮膚炎に悩んだ私は、アトピーが治った今も皮膚の小さなトラブルは日常茶飯事である。発疹のひとつやふたつで動じないが、数日後、発疹が全身に広がり始めさすがにあせった。

 腹部を中心に、発疹はどんどん拡大していく。背中や太もも、上腕にも回り、身体も何だか熱っぽい(体温計は38度を指していた)。そして、かゆい。特に夜がつらい。「全身」「発疹」「かゆい」などのキーワードでインターネットを検索すると、「帯状疱疹(ほうしん)」「梅毒」「猫ひっかき病」などの病名が次々に出てくる。

 どれも当てはまらない気がするが、病気のサイトばかり見ていると恐怖心が増す。数日の辛抱だろうと高をくくっていた発疹がついに前腕に回ったところで、病院嫌いの私もついに職場近くの皮膚科に駆け込んだのだった。

 腹部や背中を観察した女医さんは、机の上から分厚い医学書を出してくる。開いたページには、私と同じ全身の真っ赤な発疹の写真。まさか変な病気なのでは。いや、発疹が広がり続けるなど、十分変だ。それよりちゃんと治るのか。胸が高鳴る。ゆっくりと口を開いた先生が告げた。

 「ジベルばら色粃糠(ひこう)疹ですね」

 「え? ジベ? ばら? ベルばら?」。はてなマークが脳内を飛び交う。先生によると、ばら色の発疹が全身に広がる病気で、原因は特定されていないがおそらくウイルス。治療薬はなく、放っておいても1、2カ月で治るという。10~30代の患者が多く、皮膚科では比較的多く目にする病気だそうだ。一気に全身の力が抜けた。

 果たして、先生の見立てやよし。見るだけでブルー(発疹は赤かったが)になったひどい発疹は、受診後の1週間をピークに回復に向かった。上機嫌で散歩をしていると、高校時代に大ファンだった宝塚歌劇団の特別展が開催中だった。

 そこで目にしたのは、大ヒット作「ベルサイユのばら」の上演プログラム。うっすら発疹の跡が残るわが前腕と、美しいトップスターの写真を見比べて、その落差に思わず爆笑してしまった私だった。(道丸摩耶/SANKEI EXPRESS

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