SankeiBiz for mobile

集団的自衛権の行使容認 あす首相会見

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

集団的自衛権の行使容認 あす首相会見

更新

 安倍晋三首相は、集団的自衛権の行使容認をめぐり、5月15日午後に政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」から報告書の提出を受け、この日夕に記者会見して「政府の基本的考え方」を示すことを決めた。菅義偉(すが・よしひで)官房長官が(5月)13日の記者会見で明らかにした。

 記者会見では、報告書を踏まえ、集団的自衛権の行使や集団安全保障、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」に対処する領域警備法制など安全保障上の課題に関する具体的事例を明示し、必要な法整備を与党に求める。

 首相は15日の記者会見に先立ち菅氏、岸田文雄外相、小野寺五典(いつのり)防衛相らを招集して国家安全保障会議(NSC)を開催し、「基本的考え方」を審議する。

 自公両党は20日に与党協議の初会合を開催し調整を本格化する。菅氏は(5月)13日の記者会見で公明党との協議について「国民の生命、財産、国の安全に対処するのが政府の責任だ。与党の理解を得るまで粘り強く対応する」と述べた。

 与党協議では、自民党の高村正彦副総裁と公明党の北側一雄副代表が各党の責任者を務める。

 ≪政府対応二転三転 自公対立は必至≫

 集団的自衛権の行使容認に向け、安倍首相が5月15日に記者会見で発表する「考え方」や安保法制懇の報告書の提出時期をめぐり、政府の対応は二転三転した。来週から本格的に始まる与党協議をめぐっても、公明党の山口那津男(なつお)代表は慎重な姿勢を崩しておらず、激しく対立する可能性がある。

 首相サイドは当初、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈見直しの原案となる「政府方針」を発表する考えだった。

 ところが、「政府方針」となれば、すでに行使容認が決定されたとの印象を与えると公明党側が抵抗した。政府内では「政府方針」のほか、「政府原案」という呼び方も併存していたこともあり、政府内で用語を統一していなかったことも混乱を招いた。

 相次ぐ先延ばし

 今月(5月)9日、衆院第2議員会館。自民党の大島理森(ただもり)前副総裁は自身の事務所に、親交が深い公明党の北側副代表と漆原良夫国対委員長を招いた。

 大島氏は、公明党との妥協点を探って北側(きたがわ)氏らと水面下で接触を重ね、感触を政府側に伝えてきていた。(5月)9日も、テーブルにあったわずかな溝を指さし、「自公の間には、これぐらいの溝すら作ってはいけない」と結束を求めた。

 今国会中の解釈見直しの閣議決定を急いでいる首相サイドも「与党の理解をいただくのが最優先だ」(菅(すが)官房長官)として、公明党に最大限の配慮を示し、表現ぶりが決着した。

 報告書の提出も、もともとは「2013年末まで」という目標があった。しかし、特定秘密保護法の国会審議に世論の批判が上がるなどして延期となり、今年に入ると、米軍普天間飛行場移設という大きな政治課題を抱える沖縄県で名護市長選など主要選挙が相次ぎ、さらに先延ばしされてきた。

 自民党の「誘い水」

 5月の大型連休明けの13日の提出で固まったかにみえたが、国会日程の影響もあって、ようやく15日に落ち着いた。

 それでも、与野党協議の難航は必至だ。

 「連立政権は揺るぎない。自民、公明両党に隙間風がないことは、はっきりと申し上げておきたい!」

 首相は13日夕、都内で開かれた出身派閥、町村派の政治資金パーティーで、こう声を張り上げた。

 首相に先立ち挨拶した山口氏は「首相を支え、国民の期待に敢然と応える」と述べ、安倍政権の一員であり続けると強調した。

 しかし、山口氏は午前の記者会見で「連立政権の合意に書いていないテーマに政治的エネルギーを注ぐのは国民が期待していない」と述べ、首相が集団的自衛権行使にのめり込んでいると改めて牽制(けんせい)した。「あまり乱暴なことをすれば与党の信頼関係を崩すことになる」とも語った。

 自民党内には、公明党が受け入れやすい、武力攻撃に至っていない有事手前の「グレーゾーン事態」の先行協議論が浮上、首相も今国会中を目指していた閣議決定は「期限ありきではない」と、公明党への配慮も示している。

 ただ、公明党には、こうした配慮は自民党が主導権を握るための「誘い水」との見方が強い。山口氏らは、与党協議はグレーゾーンの先行協議にとどめ、支持母体の創価学会、特に婦人部が反対する集団的自衛権の行使容認は先送りしたいところだ。

 一方、自民党の高村副総裁は、集団的自衛権行使容認の議論を後回しにせずグレーゾーンと並行して議論したい意向があり、与党協議は入り口からもめる可能性がある。(SANKEI EXPRESS

ランキング