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社会
【父子DNA鑑定訴訟】「否定された父子関係」見直しか 最高裁で弁論
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最高裁弁論を終えて会見する関西訴訟の母側代理人、村岡泰行弁護士(右奥中央)ら=2014年6月9日午後、東京都千代田区霞が関の司法記者クラブ(早坂洋祐撮影) DNA型鑑定で血縁関係がないことが明らかになった場合に法律上の父子関係を取り消せるかが争われた2訴訟で、上告審の弁論が6月9日、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)で開かれた。夫側は「自分の子供として愛情をもって養育してきた。父子関係を取り消した下級審には重大な誤りがある」と主張。母側は「すでに生物学上の父と暮らしており、子の利益の視点に立って検討すべきだ」として、上告棄却を求めた。
最高裁第1小法廷は判決期日を来月(7月)17日に指定。2審の結論見直しに必要な弁論が開かれたため、鑑定結果などを根拠に父子関係を取り消した1、2審判決が見直される可能性がある。
弁論が開かれたのは関西と北海道の2訴訟。いずれも母が子の代理人となり、夫との父子関係が存在しないことの確認を求めている。子の出生時、母と夫は婚姻していたが、DNA型鑑定の結果、別の男性との生物学上の父子関係が「99.99%」とされた。
一方、民法772条は「妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定する」(嫡出推定)と定めている。
関西の訴訟で夫側代理人は「生物学上の父と暮らしていることなどは、事後的な事情」と指摘。「これを理由に父子関係を取り消せば、妻が意のままに父子関係を否定できることになり、法律上の父子関係がいつまでも不安定な状態に置かれる」と主張した。
母側代理人は、父子関係を取り消さなければ「子にとって不本意でも、真実の父でない者の子として拘束されることになるなど、子の利益を著しく損なうおそれがある」と訴えた。
関西の訴訟で1審大阪家裁は「鑑定結果は究極の嫡出推定を覆す事実」と指摘。2審大阪高裁も子が生物学上の父を「お父さん」と呼んでいることなどから、嫡出推定が及ばないケースと判断した。北海道の訴訟で1審旭川家裁は鑑定結果から「夫との間に生物学的親子関係は存在しないことは明らか」とし、2審札幌高裁も支持した。
≪急速な技術向上 民法の想定外≫
最高裁で弁論が開かれた父子関係取り消し訴訟は、DNA型などの鑑定技術の急速な向上で、民法が想定しなかった事態が起きていることを示している。最高裁が来月(7月)17日に示す判断によっては、同種事案に影響を与えそうだ。
今回の2訴訟で最大の争点は「民法の嫡出推定をDNA型鑑定で破ることができるかどうか」だ。民法は772条で嫡出推定を規定する一方、嫡出推定を覆す手段として嫡出否認の訴えを定めている。ただし、訴えを起こせるのは夫だけで、提訴期間も「子の出生を知ったときから1年以内」に限られる。
判例では、夫が遠隔地で暮らしているなど明らかに夫婦関係がない場合などには例外的に「推定が及ばない子」として扱われるケースもあったが、2訴訟ではこうした事情はなかった。
関西訴訟は、夫が単身赴任中に妻が妊娠。お宮参りや保育園行事などに家族として参加していたが、妻が別の男性と交際していることが発覚した。妻が子を連れて家を出ていき、今は交際相手とともに生活しているという。北海道訴訟では、結婚約10年後に妻が出産し、夫の子として出生届を出したが、その後、離婚が成立した。
DNA型という客観的なデータで生物学上の血縁関係が明らかになる一方、鑑定だけで父子関係が覆されれば「子が法律的に不安定な状態に置かれる」との懸念もあり、最高裁の判断が注目される。
≪夫「親子の絆」ある≫
最高裁での弁論を受け、法律上の父として子供を養育してきた夫は「DNA型鑑定の結果だけで親子が引き裂かれてしまうことが受け入れられない」とのコメントを発表した。
関西訴訟の夫は「『親子の絆』とは、共に生活する過程において親が子へ愛情を注ぎ、信頼関係を築くことだと思う」と指摘。「私と子供の間には真に『親子の絆』がある」とし、「いかなる判決が下されようとも、子供を思う気持ちに変わりはなく、将来にわたって支えであり続ける存在でありたい」と結んでいる。
北海道訴訟の夫も「子供はもちろん、信じていた元妻への愛情をもなかったことになどできない」とのコメントを発表。「命名も含めて、連日の寝不足も楽しくて仕方ありませんでした。子供は私にとても懐いていました」と振り返り、「生物学的親子鑑定を重視し、それまであった親子関係を剥奪することは人権侵害」としている。
関西訴訟の母側代理人も会見し「多くの場合は(父子関係取り消しについては)合意によって決着している。戸籍上の父が合意を拒否することで、子に不利益を負わせてよいのか」と指摘した。(SANKEI EXPRESS)