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【RE-DESIGN ニッポン】西陣織 金銀「箔」の技、新たな輝き
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「引箔」を照明に仕上げていく様子。「箔」は扱い慣れた和紙よりもさらに繊細な素材のため、熟練の和風照明職人にも慎重な作業が求められる=2012年5月15日、京都市(中島光行さん撮影) 京都を代表する文化産業の一つ、西陣織。その製造工程は20を超え、各工程は専門の職人によって分業されている。そうした工程のなかには、一般にはあまり知られていないが、重要な役割を果たしている素材がある。その中の一つが「箔」と呼ばれる素材だ。「RE-DESIGN ニッポン」の第2回は、有名な西陣織を支える無名の素材「箔」を取り上げたい。
弊社のショールーム兼オフィスがある地区は西陣にほど近く、昔から織機の音が響き続けている。この記事を執筆中の今も、隣からは「ガシャコン ガシャコン」と心地よいリズムを織機が奏でている。
西陣織では豪華な意匠を施すために、金や銀を織り込んでいく。しかし、金箔や銀箔は薄く、本来であればとても織機の力に耐えられない。そこで弱い素材である箔を織り込んでいくために、先人たちは知恵を絞った。
まず、楮(こうぞ)を漉(す)いた和紙に漆を塗る。そしてその上から箔を貼っていく。それを糸状に裁断することで、織りに耐えうる素材としていくのである。これは「引箔」と呼ばれる。場合によっては、色合いや柄を多彩にするために、硫黄を染み込ませたアイロンを用いて化学反応させていく。
最初は銀色だったものが、硫黄と熱を加えていくと「青貝色」といわれる青や、さらに「赤貝色」といわれる赤、そして最終的には黒へと変化していく。この化学反応による色変化を巧みに操り、職人は多彩な色や柄を表現していくのである。
こういった素材を総称して西陣では「箔」と呼んでいる。
西陣織の帯という完成品の知名度に比べて、「箔」は一般にはほとんど知られてこなかった。この「箔」の可能性に着目したインテリアデザイナーの井上拓馬氏と私たちは、試行錯誤を経て、照明器具として「箔」をリデザインすることを思いついた。このアイデアに共感してくれた西陣織製造卸、田村屋の田村隆久さんが箔の職人を説得し、和風照明製造、三浦照明の三浦太輔さんが照明として見事に仕上げてくださった。
「箔」を照明に生かすに当たり、箔の製造工程を変えたところはほとんどない。つまり素材はほぼ西陣織の帯に使っているものと同じなのである。ところが、用途を変えると素材はまた違った顔を持って光りだす。1つの製品を高度かつ効率的に製造するために取られてきた分業制の中で、価値が見えなくなってしまっている素材や技術は他にもたくさんある。他の用途に用いる、つまり用途をリデザインすることで、その価値をさらに発揮してくれるはずだ。(COS KYOTO代表 北林功/SANKEI EXPRESS)