米ロッキー山脈の麓に広がるコロラド州。かつて西部開拓の拠点として栄えた州都デンバーは、新鮮な空気とビールがおいしい観光都市として新たな顔を見せ始め、隣接するコロラドスプリングズは多くの米国人が住みたがる山岳リゾートとして成熟を続けている。デンバーとその近郊に、日本ではまだまだ知られていない米国の魅力を訪ねた。

　日本からの直行便でデンバー国際空港に降り立ち、自動車で市街に向かうと、まず空気がフレッシュなことに気づかされた。デンバーは標高がほぼ１マイル（１６０９．３４４メートル）で、「マイル・ハイ・シティー」の愛称を持つ。ロッキー山脈の恵みを受け、日本なら避暑地になりそうな好環境の都市なのだ。

　空気と水がうまいデンバーは、スーツ姿のビジネスマンが闊歩する都会なのに、地ビールの醸造が盛んだ。オフィスビルの中にあるバーにはそれぞれ自慢のビールを醸造するタンクがあり、常連客がのどを鳴らす。醸造所の数はデンバーの中心部だけで６０カ所を超えるそうだ。

　大リーグ球団コロラド・ロッキーズのホームスタジアムで、デンバーのシンボルでもあるクアーズ・フィールドでも、観客席に隣接したバーには、地ビール「ブルームーン」の醸造タンクがあった。分厚い断熱ガラスを隔てて黙々とタンクを洗っていた醸造技師のビル・ハッセさんは「うまいビールを造るには、とにかくタンクの手入れをまめにやることだ」と、職人気質をのぞかせる。ブルームーンは、野球場の名前になっている地元の大手ブランド、クアーズにも負けないほど、ファンに愛されているようにみえた。

　レッド・ロックス野外円形劇場

　デンバー郊外の自然公園の中にあるレッド・ロックス野外円形劇場は、ステージから飛び出した音が２つの巨岩に反響し、天然の音響効果が得られるコンサート会場として知られている。かつてアメリカ先住民が祈りをささげる聖地だったとされるが、いまではネーチャー志向のアーティストと観客に愛される自然度の高い音楽スポットだ。ビートルズの米国初公演をはじめ歴史的なコンサートも多く、今年の公演もラナ・デル・レイ、ライオネル・リッチー、ジャック・ジョンソンら第一線のアーティストが顔をそろえている。

　≪西部劇を彷彿　人気の山岳リゾート≫

　デンバーから自動車に約２時間揺られ、コロラド州第２の都市、コロラドスプリングズに着く。ミネラル成分の豊富な鉱泉がたっぷり湧き出し、その鉱泉が結核治療に効くとされたことから保養地として発達し、いまでも全米で屈指の人気を持つ山岳リゾートだ。

　気軽に散策できる「ガーデン・オブ・ゴッズ」（神々の庭）は、西部劇の映画に登場するような奇岩が立ち並ぶ。日本人からみると、とてもエキゾチックな風景だが、案内してくれた観光局の女性職員、ニキ・ミラーさんは奇岩をぬうように続くトレイルをペットの犬と一緒にジョギングするのが日課という。本格的なクライミングを楽しむグループもおり、観光地であると同時にリゾートライフに溶け込んだ自然公園でもある。また、この一帯は米国で初めて恐竜の化石が見つかったことでも知られている。

　標高４３０１メートルのパイクス・ピークは、山麓のコロラドスプリングズから山頂まで、パイクス・ピーク・コグ鉄道という登山鉄道で結ばれている。２本のレールの間に設置されたラックレールに、コグと呼ばれる歯車を組み合わせ、約１４キロに及ぶ急勾配を１時間１５分かけて登っていく。「世界一高い登山鉄道」とも言われる人気スポットだ。

　パイクス・ピークには山頂に続く未舗装の道路もあり、自動車で運んでもらったマウンテンバイクで頂上から山麓まで一気に駆け下りることもできる。ガードレールも整備されていないルートだが、自転車好きにはたまらないダイナミックなアウトドア遊びだ。

　≪ザ・ブロードモア≫

　パイクス・ピークの山麓に広がる「ザ・ブロードモア」は、圧倒的な規模と上質なサービスを持った高級リゾートホテルだ。東京ディズニーランドの２倍を超える１２１５万平方メートルの広大な敷地に、スイートルームやコテージなど７５０以上の客室と、チャンピオンシップを開催できる３つのゴルフコースや６面のテニスコート、スパなどが点在しており、まずその規模に驚かされる。同時に、従業員が一度あった顧客の顔をきちんと覚え、次からファーストネームでさらりと話しかけてくるといった、きめ細かなサービスが受けられることも魅力だ。

　≪毎日直行便を運航≫

　米ユナイテッド航空は日本から米本土７都市に毎日直行便を運航しているほか、ホノルル、グアム、ソウル、シンガポールにも定期便を運航する世界最大級の航空会社。米西部デンバーと日本を結ぶ直行便を運航している唯一の航空会社でもある。

　昨年（２０１３年）６月に開設された成田－デンバー路線には、最新鋭の「ボーイング７８７ドリームライナー」が就航。好きな映画や音楽番組などを自由に楽しめるオンデマンド型エンターテインメントシステムが全席に装備され、快適なフライトを楽しめる。（ＥＸ編集部／ＳＡＮＫＥＩ　ＥＸＰＲＥＳＳ）

　【ガイド】

米ユナイテッド航空　ＨＰ：ｕｎｉｔｅｄ．ｃｏｍ