SankeiBiz for mobile

宇宙の目で温暖化監視 CO2発生源など地図化

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

宇宙の目で温暖化監視 CO2発生源など地図化

更新

 米航空宇宙局(NASA)は7月2日、地球温暖化の主な要因とされる温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を観測する衛星「OCO-2」の打ち上げに成功した。大気中のCO2濃度を正確に測定したり、植物がCO2を吸収し光合成を行う際に発する肉眼では見えない光をセンサーで宇宙から感知したりできる。CO2が地球上のどこで発生し、その後、植物や海、土壌などに吸収されるメカニズムを解明。発生源と吸収源を地図化し、CO2の排出量削減に活用する計画だ。

 NASA、打ち上げ成功

 「気候変動への対策は、われわれの世代がやらねばならない挑戦である」

 NASAのチャールズ・ボールデン長官(67)は2日、NASAとしては初となるCO2観測衛星の打ち上げの意義を強調。地球科学部門の責任者マイケル・フレイリック氏も「今回の挑戦的なミッションは、タイムリーかつ重要なものだ」と、喜んだ。

 OCO-2(軌道上炭素観測衛星2)は、米カリフォルニア州のヴァンデンバーグ空軍基地から「デルタ2」ロケットに搭載されて打ち上げられ、軌道に投入された後、太陽電池パネルも開いた。NASAは同種の観測衛星の打ち上げに2009年と11年に失敗しており、ようやく悲願をかなえた。

 大都市ごとに測定可能

 欧米の科学メディアなどによると、大気中のCO2濃度は、地上の測定所や航空機を使い約100カ所で定点的に観測が行われているが、アマゾンの熱帯雨林や太平洋中部海域などでは定点観測が行われておらず、地球全体をカバーした包括的かつ体系的なデータがない。このため、宇宙から観測できる衛星の打ち上げが待たれていた。

 OCO-2は、地上約700キロの軌道から地球全体の約80%をカバーし、1日に10万回超の測定を行える。また最大3平方キロの範囲を対象にCO2の動きを観測することが可能で、ロサンゼルスやパリ、北京といった大都市ごとの発生状況を測定できるという。

 さらに植物が光合成の際に出すわずかな光を捉えることができるセンサーを搭載しており、森林によるCO2の吸収状況も観測できる。

 こうして収集したデータに基づき、CO2を排出している場所を赤で、吸収している森林などの場所を緑で表示し、地図を作製する。

 メカニズム解明へ

 NASAによると、石油や石炭の燃焼といった産業活動によって、年約400億トンに上るCO2が排出される一方で、その約50%が森林や海などに吸収されるという。吸収されないCO2が地球を覆い、温室効果によって、温暖化を招いているとされる。

 ただ、発生と吸収の正確なメカニズムは分かっておらず、将来的にどれだけのCO2が蓄積されていくのかも予測できない。発生源と吸収源を示す地図が作製できれば、地球規模での温暖化対策に生かせる。

 NASAの科学者マイク・ガンソン氏はネイチャー系ニュースサイト、ナショナル・ジオグラフィック・ニュースに対し、「石炭火力発電所や工場といった大規模なCO2の発生源がはっきりと浮かび上がってくるだろう」と語り、宇宙からの監視に期待を込めた。(SANKEI EXPRESS

ランキング