SankeiBiz for mobile

【ベネッセ情報漏洩】39歳の派遣SE逮捕 ギャンブルで借金「250万円で売却」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの社会

【ベネッセ情報漏洩】39歳の派遣SE逮捕 ギャンブルで借金「250万円で売却」

更新

 通信教育大手「ベネッセコーポレーション」の顧客情報流出問題で、転売目的で約1020万件の顧客情報をコピーして持ち出したとして、警視庁生活経済課は7月17日、不正競争防止法違反(営業秘密の複製)容疑で、顧客情報データベース(DB)の保守・管理会社に派遣されていたシステムエンジニア(SE)の松崎正臣(まさおみ)容疑者(39)=東京都府中市寿町=を逮捕した。警視庁によると、容疑を認めている。

 松崎容疑者はベネッセグループの保守・管理会社「シンフォーム」(岡山市)の東京支社に派遣され、システム開発を担当。2013年7月~14年6月に顧客情報のコピーと転売を繰り返していたとみられ、コピーした情報には1993~2013年に生まれた21~0歳の顧客の氏名や住所、電話番号などが含まれていた。生活経済課は不正競争防止法違反の開示容疑での立件も視野に捜査、流出経路などの全容解明を進める。

 逮捕容疑は6月17日、東京都多摩市のシンフォーム東京支社で、パソコンを使ってDBに自分のIDでアクセスし、営業秘密である約1020万件の顧客情報をスマートフォン(高機能携帯電話)にコピーして持ち出したとしている。

 松崎容疑者は業務でDBから大量のデータをコピーする権限が与えられており、DBへのアクセス履歴やシンフォーム東京支社室内への入退室記録などから関与が浮上。任意提出されたスマホに約1020万件の顧客情報が残されており、DBとの照合でほぼ一致した。

 ベネッセは6月26日に流出被害を把握。社内調査で松崎容疑者から事情を聴いたところ、「ギャンブルで借金があり、カネに困っていた」と認めた。逮捕前の生活経済課の任意聴取にも「カネがほしかった。15回ほどコピーし、計約250万円で名簿業者に売った」と説明していた。

 ≪1020万件の「宝の山」 偶然発見し芽生えた犯意≫

 「偶然の発見」から犯意は芽生えた。

 2013年7月、東京都多摩市のIT関連会社「シンフォーム」東京支社。会社の貸与ノートパソコン(PC)に充電しようとスマートフォンのケーブルを差した瞬間、記録端末を差しても反応しないようにガードされたPCが反応し始めた。

 「セキュリティー上の欠陥」-。ベテランのシステムエンジニアである松崎容疑者は、目の前で起きている出来事の意味を瞬時に理解した。

 PCは、ベネッセコーポレーションのDBに接続されていた。PCが作動したことは、数千万件の顧客情報をスマホで外部に持ち出すことができる。

 「名簿はカネになる」。松崎容疑者は、顧客情報の価値を十分すぎるほど分かっていた。それも、対象が「0~21歳」という宝の山だった。

 松崎容疑者はその日のうちに犯行を決めた。顧客情報をスマホに保存して自宅に持ち帰り、インターネットで見つけた名簿業者に売却を持ちかけた。

 今年6月までに松崎容疑者は顧客情報を15回程度、名簿業者に計約250万円で売却。1件当たり0.25円という常識からかけ離れた値段だった。

 松崎容疑者の自宅マンションは京王電鉄京王線府中駅から北へ約200メートルの飲食店や商業ビルが並ぶ一角。妻と長女(3)と次女(1)の4人暮らし。よく家族でイヌを散歩に連れて行ったり、生まれたばかりの次女をベビーカーに乗せて一家で外出したり、近所では円満な家族として知られていた。その幸せな家庭のドアを7月17日午前、警視庁生活経済課の捜査員がたたいた。

 「ベネッセの顧客情報を持ち出したことは間違いない」。これまでの捜査でDBのコピー履歴から松崎容疑者による犯行と判明しており、容疑を認めざるを得なかった。

 観念したような表情を見せる松崎容疑者は、丸刈りに無精ひげ。近くの喫茶店経営の女性は普段とは違う外見に、「目つきが鋭く険しい顔つきで別人だと思った」と驚きを隠さない。

 ただ、近所の女性は他の一面も知っていた。松崎容疑者の妻から「パチンコが好きで休日によく通っているんです」などと聞かされていたという。「ギャンブルで使った」。松崎容疑者は、顧客情報を転売したカネの使い道を、ベネッセ側にそう説明している。

 シンフォームでも技術に詳しいとして重宝されていた松崎容疑者。その卓越した技が、犯罪の一線を越えさせたのは皮肉ともいえる。

 松崎容疑者の担当は、DBの検索システムの開発など。システムの不具合を確かめるため、顧客情報を全件ダウンロードするなど、操作に必要な大半の権限を与えられたごく少数の一人だった。(SANKEI EXPRESS

ランキング